国立競技場で56年間、大勢の人々が座り、歴史的瞬間を見てきた青いシート。
この青いシートを使って、3組のデザイナーとカリモク家具が、新しい椅子を作りました。
1958年に開場し、1964年の東京オリンピックのメインスタジアムとして使われた国立競技場。
2014年の閉場までに、サッカーやラグビーといったスポーツやコンサートに湧いた、今も多くの人々の記憶に残る場所です。2015年の解体に先立ち、この特別な場所から取り外し保管しておいた青い自由席のシート。この度、ドリルデザイン、白鳥浩子、鈴木元という3組のデザイナーが新しい椅子に蘇らせました。それぞれ「スツール」「チェア」「2人掛けのベンチ」をデザイン。個数限定で販売されています。
設計と製造はカリモク家具が担当。商品にはカリモクのロゴの焼き印が押され、このシートが国立競技場で使われていたことを証明するプレートが付属します。
□ TOKYO スツール
軽やかさと強度を兼ね備えたスツール。「これを所有した人が、どのように使うのか。何を思うのか。何十年か後には、どんな存在になっているのか。そんなことを意識しながらデザインをしていました」。ネーミングは、直線的で軽やかなフォルムが TOKYO のイメージに重なるように感じたことから。「シンプルな構造」と、プラスチックと木材による「素材のコントラスト」。そして「フォルムのバランス」。これら3つの要素をひとつにまとめ、無駄がなく、特徴的なカタチを作り上げた。「家具とは、空間をつくる道具であり時間をつくる道具。そして人生をつくる道具。人間や空間と密接に関わるので、機能性だけでは表せない、魅力を含んだ存在です」というドリルデザインらしい、椅子としての明確な美しさがある。
TOKYO スツール/ SAYONARA 国立競技場(限定数:350脚)
デザイン:ドリルデザイン
価格:3万2400 円(税込)
販売期間:8月23日(23時59分)まで
サイズ:W400×D400×H465(シートハイ:440mm)、3.3kg
シート素材:高密度ポリエチレン
材料:ホワイトアッシュ材
塗装:ピュアアッシュ色(ポリウレタン樹脂塗装)
※フレーム部分にカリモクのロゴの焼き印が入ります。
※商品にはシートが国立競技場で使われていたことを証明するプレートが付属します。
design: ドリルデザイン
林裕輔と安西葉子によるデザインスタジオ。2001年設立。これまでに「Canon」「MUJI」「Camper」「Mercedes Benz」「TIME&STYLE」など国内外のブランドにデザインを提供。「Red Dot Design Award」「German Design Award」「Good Design Special Award」「Design For Asia Award」など受賞歴多数。
□ pony チェア
「国立のシートは、誰かにとって記憶に残り、価値や愛着があったモノ。古くなったからといって破棄するのではなく、一部だけでもそのバトンを受け継いで、新しい住処、その先にある関係性を作れたら」と考えデザインした小ぶりな椅子。人を乗せ、思いを運ぶ架け橋としての「小さな椅子=ポニー」という意味から名付けられた。その見た目に、どこかアンバランスさやユーモアを感じる理由は、腰を支えるように付けられた、チェアとしては小さな背もたれにある。「何より、座面の愛らしい存在感や特徴的なフォルム、色を尊重したくて」と話す白鳥のデザインが、かつて国立競技場を彩った、青いシートの存在感を引き出している。
pony チェア/ SAYONARA 国立競技場(限定数:150脚)
デザイン:白鳥浩子
価格:4万3200円(税込)
販売期間:8月23日(23時59分)まで
サイズ:W395×D510×H650mm(シートハイ:420mm)、4.8kg
シート素材:高密度ポリエチレン
材料:ブナ材
塗装:ピュアビーチ色(ポリウレタン樹脂塗装)
※販売する商品は、シート下の左右の桟の高さを変更する予定です。意匠図面をご確認の上、ご注文ください。
※フレーム部分にカリモクのロゴの焼き印が入ります。
※商品にはシートが国立競技場で使われていたことを証明するプレートが付属します。
design: 白鳥浩子
家具と空間のデザイナー。東京造形大学で家具デザイン、英ロンドンのチェルシー大学で空間デザインを専攻後、2006年英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)デザインプロダクツ修了。RCA の同窓生と設立した OKAYstudio のメンバー。11年~13年スキンケアブランド「Aesop」のクリエイティブディレクターを務める。
□ KOKURITSU ベンチ
「青いプラスチックの座面は、スポーツ観戦のアイコン。座面の形や色、座ったときの温度、隣の席との距離感が、スポーツ観戦の平和な記憶に重なる」と鈴木は語る。「そのモノを一生使う自分を想像できるもの」が自身の家具選びの基準と話す鈴木は、長く使ってもらえるようにと、隣りに座った人と時間や体験を共有できるこのベンチをデザイン。2つの座面の幅は、国立競技場で使われていた当時のシートピッチを再現。「古い街並みが美しいのは、そこに膨大な時間や記憶が埋まっているからだと思います。だから住人にとっては物理的な建物以上の存在になっている。このベンチが、モノに積もる時間や記憶の深さを考えるきっかけになれば」。使い道がない木材で作ったフレームもシートと同様に、その背景を感じさせる素材。シートやフレームの素材が持つ背景の上に、使う人それぞれの記憶が積み重なり、より愛着が深まっていくベンチだ。
KOKURITSU ベンチ/ SAYONARA 国立競技場(限定数:200台)
デザイン:鈴木元
価格:5万4000円(税込)
販売期間:8月23日(23時59分)まで
サイズ:W845×D400×H460mm(シートハイ:435mm)、6.5kg
シート素材:高密度ポリエチレン
材料:オーク材(集成材)
塗装:ピュアオーク色(ポリウレタン樹脂塗装)
※フレーム部分にカリモクのロゴの焼き印が入ります。
※商品にはシートが国立競技場で使われていたことを証明するプレートが付属します。
design: 鈴木元
プロダクトデザイナー。1975年生まれ。金沢美術工芸大学卒業。英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)デザインプロダクツ修了。松下電器産業(現パナソニック)、IDEO ロンドン、ボストンオフィスを経て2014年 GEN SUZUKI STUDIO 設立。グッドデザイン賞審査委員、Cannes Lions 審査委員、金沢美術工芸大学非常勤講師。
(文:インテリア情報サイト編集部-1 / 更新日:2015.07.28)