「つながりの調整」を発生させる」
三角形状の土地に建つ「家」
大久保博夫/CHOP+ARCHI 建築設計事務所
大久保博夫/CHOP+ARCHI 建築設計事務所の三角形状の土地に建つ「家」を紹介します。
「つながりの調整」を発生させる
敷地は都内有数の住宅密集地にあり、取分け特徴的な事は二本の道路が鋭角に交わる三角形状の土地である。施主は40代と30代のご夫婦と小学生の娘の三人家族。施主の要望は周辺環境との程良い関係性とプライバシーの確保、そして東南角地の三面接道による直射日光など自然環境への対策方法が挙げられた。またその特異な敷地形状を最大限活用出来るような平面構成を求められた。
周辺住宅の多くはこの敷地に向けられている。三方向道路に面した開放的な立地である反面、周囲は住宅に取り囲まれ周りからの視覚的圧迫を余儀なくされている。そこで周辺環境との関係性を柔らかく繋ぐ要素として、内と外との中間領域となるヴォイドを三つ配置する事にした。
三角形の敷地に建物を造ろうとした場合どうしても余白部分が出来てしまう。且つコーナー部は鋭角でデッドスペースになり易い。そこで構造設計との便宜的事由も含め敷地三隅を外部ヴォイドとし、それにより室内側に鈍角を発生させ居室内をやわらかな形状にさせる事が出来た。
プロポーションは敷地形状いっぱいのボリュームとし、三角形の地型と斜線制限を避けたそのままの形状とした。外壁はフレキシブルボードを仕上材として使用し、屋根はFRP防水を外壁に塗り下げ雨水の浸入を防ぐ仕様とした。また基礎の造成時に発生する残土を盛土転圧し床スラブの型枠として利用した。これは残土処分を無くしコスト削減にも効果的であった。
このヴォイドは周辺環境、住人、街、すなわち外部との接続の空間として機能する。そして外部との『つながりの調整』を発生させる。人の出入という直接的なつながり。切り込まれた窓による街とのつながり。住人同士の視界でのつながり、太陽、音、風など自然環境とのつながり。これら内と外からなる要因との関係性をこの三つのヴォイドによって『つながりの調整』が行われている。そしてつながりを調整する事で互いの程良い関係性を形成し、結果として周囲環境との共存へと導かれる。
建築設計:CHOP+ARCHI建築設計事務所 構造設計:OUVI 写真:西川公朗
ABOUT :
大久保博夫 (おおくぼひろお/CHOP+ARCHI 建築設計事務所 代表)
1971年東京生まれ。家具デザイン、プロダクトデザインを学んだのち、建築設計事務所設立。住宅建築や商業建築をはじめ、ショップデザイン、広告、オリジナルの家具やプロダクトのデザインなど幅広いデザイン活動を展開している。代表作にDIESEL LIVING INSTALLATION PROJECT、Why Juice?、Tsukiji Building、Wombなど。
www.choparchi.com
(文:インテリア情報サイト編集部-1 / 更新日:2017.06.15)