村野建築模型の森 縮尺/200分の1 素材/紙 制作・所蔵/京都工芸繊維大学木村・松隈研究室 撮影:市川靖史
日本を代表する建築家の一人、村野藤吾(1891-1984)は、戦前戦後を通して幅広く多様な建築を数多く設計しました。村野は住まう人々、集う人々に対して建築はいかにあるべきか、向き合うべきかを常に考え、時代の流行に乗ることのない、ゆるぎない独自の理論を展開したと言えます。その姿勢から生まれた建築は、きめ細かい配慮による密度のあるディテールと豊かな素材感、そして有機的な優しさと品格を備えています。
改修工事を経て2003年に目黒区総合庁舎に生まれ変わった旧千代田生命本社ビル(1966年竣工)は、時代を超えた建築の魅力が50年近く経過した現在でも、いきいきと感じられます。移転から12年を迎える今年、目黒区美術館で、約80個の村野藤吾の建築模型による「村野藤吾の建築-模型が語る豊饒な世界」展が開催されます。近年、関心が高まる村野建築の再評価をさらに推し進め、村野建築の全体像について、メディアとしての「模型」を通して俯瞰していく事をねらいとしています。
同館では、村野藤吾設計による目黒区総合庁舎(旧千代田生命本社ビル1966年竣工)を文化財としての視点から取り上げ、開庁1周年の2004年に「村野藤吾のディテール展」が開催されました。この展示は、村野藤吾のご子息、故村野漾氏の全面的な協力により、京都工芸繊維大学美術工芸資料館から出品された本建築の設計図と、同館で改修前に撮影された写真家・新良太氏の写真を組み合わせて構成されたものです。その際に、プロの建築家による「庁舎建築ガイドツアー」が立ち上げられ、それから約10年にわたり毎年250名を越える参加者を受け入れる実績を積んできました。
このところ各地で、村野藤吾に関する展覧会が開かれています。「村野藤吾―建築とインテリア ひとをつくる空間の美学の展覧会」(2008年、パナソニック汐留ミュージアム)、「建築家・村野藤吾と尼崎」(2012年、尼崎市総合文化センター)、「特別展村野藤吾 やわらかな建築とインテリア」(2014年、大阪歴史博物館)など、さらには、2011年、建築評論家の長谷川堯氏の「村野藤吾の建築 昭和・戦前」が上梓されるなど、村野藤吾の研究は着実に進んでいます。
京都工芸繊維大学美術工芸資料館に託されている村野・森設計事務所の建築設計図は、同校建築学研究室を中心に外部研究者を加えた「村野藤吾の設計研究会」により研究が進められ、今年13回目を迎える「村野藤吾建築設計図展」で、その研究成果が発表されてきました。今回出品される精緻な建築模型は、同校学生がこの展覧会に合わせて、図面から建築を読み取り、時間をかけて制作されてきたものです。
同展は、京都工芸繊維大学美術工芸資料館、村野藤吾の設計研究会との共同企画として準備が進められ、その村野建築模型80点余を中心に構成されるものです。100分の1、200分の1で制作された模型は、村野建築の魅力を、ディテールからマクロ的なスケールへとさまざまな視線から伝えてくれます。そして同大学美術工芸資料館所蔵の建築設計図や写真を加え、普段では見ることができない視点からとらえた村野建築の豊饒な世界にせまります。
[展示構成]
1.東京の村野建築を模型で視る―模型約10点
出品模型―日本生命日比谷ビル、森五商店東京支店、旧日本興業銀行本店、読売会館(旧有楽町そごう)、松寿荘、西川商店、旧日本ルーテル神学大学、早稲田大学文学部校舎、旧新高輪プリンスホテル、八重洲ダイビル、旧千代田生命本社ビルほか、と各建築設計図、写真
2.東京以外の村野建築を模型で視る―模型約70点
主な出品模型―世界平和記念聖堂、尼崎市庁舎、旧大阪新歌舞伎座、宇部市渡辺翁記念会館、谷村美術館ほか、と建築設計図、写真
3.村野藤吾の年譜と資料
家具や時計、資料を展示。
[開催概要]
会 期:2015年7月11日(土) ~ 2015年9月13日(日)
時 間:10:00 ~ 18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜日 ただし、7月20日(月曜日・祝日)は開館し、7月21日(火曜日)は休館。
観覧料:一般 800(600)円
大高生・65歳以上 600(500)円
小中生 無料
障がいのある方は半額・その付添者1名は無料、( )内は20名以上の団体料金。
主 催:(公財)目黒区芸術文化振興財団 目黒区美術館
企画協力:京都工芸繊維大学美術工芸資料館、村野藤吾の設計研究会
特別協力:京都工芸繊維大学木村・松隈研究室
協 力:MURANO design
助 成:(公財)花王 芸術・科学財団
協 賛:サッポロビール株式会社、株式会社イーストウエスト
後 援:一般社団法人 日本建築学会、一般社団法人 東京建築士会
〒153-0063 東京都目黒区目黒2-4-36
tel.03-3714-1201 fax.03-3715-9328
http://mmat.jp/
(文:制作 PR-N_PR制作部-3 / 更新日:2015.07.18)