【フォト・レポート】「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」展

 

 

【フォト・レポート】
パナソニック汐留美術館で開催の
開館20周年記念展 帝国ホテル二代目本館100周年
「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」

2024年1月11日(木)〜 3月10日(日)

 


 

パナソニック汐留美術館では、開館20周年記念展 帝国ホテル二代目本館100周年「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」を、2024年1月11日(木)〜 3月10日(日)の期間 開催。

※混雑に伴い、2月17日(土)以降の土曜日・日曜日・祝日、及び3月1日(金)〜3月10日(日)までの全てで、日時指定予約を導入いたします。また、会期末は開館時間を延長いたします。
予約方法:当館ウェブサイトより予約をお願いいたします。
     https://panasonic.co.jp/ew/museum/

 

「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」で知られるアメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867–1959)は、「帝国ホテル二代目本館(現在は博物館明治村に一部移築保存)」や「自由学園」を手がけ、熱烈な浮世絵愛好家の顔も持つ、日本と深い縁で結ばれた建築家です。

展示会場はセッション1~7に分かれており、そのエリアごとに紹介していきます。


 

▼ セクション1:モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観

浮世絵に着想を得て考案した新しい建築ドローイング、初の公共建築ユニティ・テンプルの100年前の模型、ライトが手がけた展覧会デザインなど、初期の取り組みが紹介されています。


ライトが建築家として歩み始める舞台となった、アメリカの近代化を象徴する中西部最大の商業都市シカゴ。1893年のシカゴ万博で日本のパヴィリオン「鳳凰殿」を知って日本文化に触れたライトは1905年、日本を訪問します。
 


明治政府のもとで近代的な都市へと変貌しつつあったモダン都市東京を紹介した写真。当時の街の様子がよくわかります。
 


日本のライト建築の代表的作品である「自由学園」。「自由学園」はセクション3でも詳しく説明しています。
 


浮世絵に着想を得て考案した新しい建築ドローイングが展示されています。
 

 

 

 


▼ セクション2:「輝ける眉」からの眺望

ライトの代表的な建築スタイルである水平ラインを意識したデザインが特徴のプレーリー住宅。アメリカ中西部を象徴する平原や原生植物から着想された初期のプレイリー・ハウスから代表作「クーンリー邸」、「ロビー邸」、また日本での作品「山邑邸(現・ヨドコウ迎賓館)」「小田原ホテル計画案」などが紹介されていました。


日本では照明器具で有名な語句「タリアセン」。「輝ける眉」=タリアセンとはライトの祖先が話したウェールズ語であり、ライトが設計し自邸兼スタジオ、そして学校のキャンパスとして使われていた場所の名前です。
 



さらには日本の変化に富んだ地形、山や滝のある風景、日本の植物との出会いもライトの創造力を刺激し、やがて代表作「カウフマン邸(落水荘)」へとつながったそうです。
 

ライトが考える有機的建築とは環境や気候に適った、人の生活を豊かにする建築です。ライトにとって、地形や風土は建築と密接に結びついたものでした。アメリカ中西部の地で着想し、確立されたプレイリー・スタイル。深い軒と水平的な広がりをもつ住宅は、外部と内部が有機的につながるライトならではの建築といえます。また「山邑邸」など、日本の変化に富んだ地形での設計体験は、自然と融合した豊かな建築の創造を促し、「(落水荘)」へと結実します。庭園デザイナー、ジェンス・ジェンセンとの協働による庭も、四季に応じて変化し、在来種と外来種とが共存する多世界、多文化の表れとして注目すべきものです。(展覧会説明文引用)

 

 


▼ セクション3:進歩主義教育の環境をつくる

「帝国ホテル」設計のために日本に滞在したライトは、自由学園の創立者 羽仁もと子の依頼で「自由学園」を手がけています。「クーンリー・プレイハウス幼稚園」で用いられたステンド・グラス、自由学園の教育資料などを展示。


フランク・ロイド・ライト《クーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラス》
1912年頃、豊田市美術館蔵

 

ライトは家庭生活や教育のあり方の変革に取り組んだ女性運動家たちともネットワークを形成しました。シカゴ郊外のオークパークの初期の自邸とスタジオは、建築の実験と、家庭生活や職場環境の近代化に対応し増改築が重ねられ、設計室や幼児教育のためのプレイルームを備えました。マリオン・マホニーはここで活躍したライトの初期の有能な女性スタッフです。また、施主のクィーン・クーンリーはライトによる建築で、近代的な教育理念に基づく「クーンリー・プレイハウス幼稚園」を実現しました。(展覧会説明文引用)

 

 

 


▼ セクション4:交差する世界に建つ帝国ホテル

当時の帝国法ホテル支配人の林愛作からの依頼を受け、日本に延べ3年以上滞在しながら帝国ホテル(建設期間1913-23年)を設計したライト。このエリアでは図面、写真、家具、かつて帝国ホテルの一部を構成していたテラコッタや大谷石のブロックなど、さまざまな資料の展示を通じてこの大建築を紹介。

一番に目を引くものは3Dスキャン&3Dプリンタによる帝国ホテル二代目本館の模型。(制作:京都工芸繊維大学、2023)
 


帝国ホテル二代目本館 椅子(ピーコックチェア)
デザイン:1913年、製作1930年頃、豊田市美術館蔵


帝国ホテル二代目本館 椅子
デザイン:1920年頃、修復:2023年

チェアの展示台に使われているのは大谷石。外装材として多く使われていた大谷石を内装にも取り入れたのはライトが初めてだと言われています。館内の暖炉や柱、階段などに使用され、それぞれに幾何学的な彫刻が施されていたそうです。


当時の帝国ホテルレストランで使用されていたテーブルウェア。メニュー表もありました。

その他、同時期の1913年から1914年にかけてシカゴで設計した娯楽施設「ミッドウェイ・ガーデンズ」のドローイングも比較展示。

 

 


▼ セクション5:ミクロ/マクロのダイナミックな振幅
ライトが生涯にわたって抱いたコンクリートへの関心と、ユニバーサルな建築システムの探求、またそのシステムを用いた住宅を紹介。


ユニット・システムの実践例であるユーソニアン住宅の原寸モデルが展示されていました。

来館者はここでの写真撮影が可能です。
 


左側からゴードン・ストロング・プラネタリウム計画案 透視図、鳥瞰図 《米国議会図書館版画写真部蔵》


その他、テキスタイル・ブロック・システムによるミラード夫人邸「ミニアチューラ」からコミュニティ全体の設計への応用例「ドヘニー・ランチ宅地開発計画」まで、迫力あるドローイングで紹介されています。


ライトは小さなものから大きなものまで展開可能なユニット・システムによる建築を考案しました。全体と部分とがダイナミックに呼応するライト建築の発想の根幹には、彼が幼少時に体験したフレーベルの教育ブロックがあったと言います。ライトはまた素材についても強い関心をもち、地域に根ざした材料を用いる一方で、コンクリートの持つ一体性に着目することで、グッゲンハイム美術館のような巨大建築も実現しました。(展覧会説明文引用)

 

 


▼ セクション6:上昇する建築と環境の向上
ラーキン・ビルやジョンソン・ワックス・ビル、ライトが考えた美しいオフィス空間、デスクや椅子を展示。


正面のチェアはジョンソン・ワックス・ビル 本部棟 中央執務室の椅子
 


右側のデスクは 《ラーキン・ビルの椅子付き事務机》1904年頃 豊田市美術館蔵

 

プレイリー・ハウスから帝国ホテルまで、水平方向への広がりが印象的なライト建築ですが、垂直に伸びる高層建築にもライトは早くから関心を示しました。そして生涯を通じて高層ビルの設計に取り組み続け、また、新しい工学・構造技術を開拓しています。ジョンソン・ワックス・ビルでは直径23センチの細い柱が上昇するにつれ大きく広がり天井を支える「樹状柱」を考案、当初は実現不可能と言われました。その研究タワーでは、樹木の基本構造にならうタップルート(主根)構造を採用し、構造壁としての内部間仕切りをなくし、カーテンウォールの採用によって自然光をふんだんに取り込んだ空間を作り出しています。ライトは都市機能をビルの中に集約させることで都市の無秩序な拡大を抑止し、豊かな自然環境と生活が実現できると考えました。(展覧会説明文引用)

 

 


▼ セクション7:多様な文化との邂逅

最後はライトとアメリカ国外の作家たちの交流を取り上げると共に、多文化的な要素を取り入れた作品を紹介。またイスラム文化との出会いから生まれた美しい都市像、実現にいたらなかった大バグダッド計画も紹介されていました。



フランク・ロイド・ライト
《大バグダッド計画案(イラク、バグダッド)1957年 鳥瞰透視図 北から文化センターと大学をのぞむ》
コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ蔵
The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

 

 



ライトを形作ったのは、多様な文化との出会いと交流でした。ゴルフ文化と先住民の建築の実践を融合させたナコマ・カントリー・クラブ計画案。また、ヴェネツィアの運河沿いに計画したマシエリ記念学生会館も紹介します。マシエリ記念学生会館は、最終的にはライトに深い影響を受けたイタリア人建築家カルロ・スカルパによってかたちを変えて実現しました。(展覧会説明文引用)

 

展覧会の最後は、田園地帯に広がる生活と労働のラディカルな再構築であるブロードエーカー・シティ構想をCGアニメーションで表現したスペインのロメロ氏の作品で幕を閉じます。

 

7度も来日し、浮世絵をはじめとする日本の文化を賞賛していたライト。展覧会前半はなぜ日本で帝国ホテル二代目本館の他、数件の建築を日本に残したのかなどがよく理解でき、後半は多様な文化と交流し未来的な活動をしていたライトを知りました。

会場全体は、これだけたくさんの偉大な建築の美しいドローイングを見る機会はもうやってこないのではないか、と感じるくらいドローイング、図面の展示が多く、一つ一つを熱心に見入ってしまいました。

ライトの思想を直接的に感じられる貴重な展覧会です。是非足をお運びください。


 

※混雑に伴い、2月17日(土)以降の土曜日・日曜日・祝日、及び3月1日(金)〜3月10日(日)までの全てで、日時指定予約を導入いたします。また、会期末は開館時間を延長いたします。


①日時指定予約について
予約が必要な日程:2月17日(土)以降の土曜日・日曜日・祝日、及び3月1日(金)〜3月10日(日)
予約方法:当館ウェブサイトより予約をお願いいたします。
     https://panasonic.co.jp/ew/museum/
・2月15日(木)より、2月17日(土)、18日(日)、23日(金・祝)、24日(土)、25日(日)に
ご来館分の日時指定予約の受付を開始します。
・2月19日(月)より、3月1日(金)〜10日(日)にご来館分の日時指定予約の受付を開始します。
・無料対象者[中学生以下、障がい者手帳をお持ちの方とその介護者(1名まで)、招待券、その他]
のお客様も日時指定予約が必要です。
なお、当日、空きがあれば日時指定予約なしでご入館いただけます。

②会期末の開館時間について、「3月4日(月)〜3月9日(土)」が変更になりました
・3月1日(金)10:00-20:00
・3月2日(土)〜3月3日(日)10:00-18:00
・3月4日(月)〜3月9日(土)10:00-20:00  ※3月6日(水)は開館します。
・3月10日(日)10:00-18:00    
(最終入館は閉館時間の30分前)

 

【開催概要】
展覧会会期:2024年1月11日(木)〜 3月10日(日)
※会期中、一部展示替えします。前期1月11日─2月13日、後期2月15日─3月10日。2月15日以降に再入場の場合は、半券ご提示で100円割引となります。
開館時間:午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
※2月2日(金)、3月1日(金)、8日(金)、9日(土)は夜間開館 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)
休館日:水曜日(ただし3月6日は開館)
入館料:一般:1,200円、65歳以上:1,100円、大学生・高校生:700円、中学生以下:無料
※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。
ホームページ割引引き換え券はこちら
主催:パナソニック汐留美術館、フランク・ロイド・ライト財団、東京新聞
後援:アメリカ大使館、一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会、一般社団法人DOCOMOMO Japan、有機的建築アーカイブ、港区教育委員会
特別協力:コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館、株式会社 帝国ホテル
助成:公益財団法人ユニオン造形文化財団
展示協力:有限責任事業組合 森の製材リソラ
会場構成:佐藤熊弥(tandem)
※この展覧会は、フランク・ロイド・ライト財団の協力のもと開催されます。

パナソニック汐留美術館へのアクセス

 

パナソニック汐留美術館
https://panasonic.co.jp/ew/museum/

 

《参考書籍》
帝国ホテル二代目本館100周年記念展覧会「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」展公式カタログ。
▼「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」 ↓ ↓

 

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(文:制作_インテリア情報サイト編集部-3  /  更新日:2024.01.13)

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