稀代の建築家、安藤忠雄。
その半世紀に及ぶ挑戦の軌跡と未来への展望に迫る!
国立新美術館 開館10周年 「安藤忠雄展―挑戦―」開催
国立新美術館は開館10周年記念として、2017年9月27日(水)~ 12月18日(月)まで、「安藤忠雄展―挑戦―」 を開催します。
元プロボクサー、独学で建築を学ぶ―という異色の経歴で知られる建築家安藤忠雄は、1969 年より「都市ゲリラ」として建築設計活動をスタート。以来、既成概念を打ち破るような斬新な建築作品を次々と世に送り出してきました。1990 年代以降はその活躍の舞台を世界に広げ、アジア・ヨーロッパ・アメリカなど各国で、意欲的な作品を実現させています。その一方でさらに、建築という枠組みを超えた環境再生や震災復興といった社会活動にも、果敢な取り組みを見せています。
本展では、この稀代の建築家が、いかに生きて、いかに創り、今またどこに向かおうとしているのか―その壮大な挑戦の軌跡と未来への展望を「原点/住まい」「光」「余白の空間」「場所を読む」「あるものを生かしてないものをつくる」「育てる」という6 つのセクションに分けて紹介します。模型やスケッチ、ドローイングなど、総計200 点余りの設計資料が展示される空間デザインは、安藤忠雄自身の手によるものす。会場を訪れる人は、その空間を巡る中で建築家が歩んできた道程を追体験し、建築という文化の豊かさと、その無限の可能性を再確認することでしょう。
| 展覧会 構成
■ プロローグ・建築家 安藤忠雄
稀代の建築家、安藤忠雄のすぐれた感性と行動力は、いかにして育まれたのか。そのエネルギーの源は何なのか。ここでは、建築家となる以前に世界放浪をした際の旅のスケッチや、数回の増改築を経たアトリエの建物の変遷などにより、安藤忠雄の活動歴を紹介。さらに、安藤のデスクのある現在のアトリエの一部を、原寸大で再現。建築家の日常に迫ります。
1969年、建築設計活動をスタートした28才当時の安藤忠雄光の教会(撮影:荒木経惟)
■ SECTION 1 原点/住まい
安藤忠雄にとって、人間の「住まう」という最も根源的な営みを受け止める住宅こそが、建築の原点です。その作品の展開の中で、打ち放しコンクリート、単純な幾何学的造形、自然との共生といったキーワードsectionに象徴される、安藤建築の原型は完成しました。ここでは、初期の代表作から近年の圧倒的スケールの海外作品まで、100を超える住宅作品のハイライトを一挙公開します。
住吉の長屋,1976年,大阪府大阪市 (撮影:新建築社 写真部)
昭和 54年度日本建築学会賞を受賞した、安藤の実質上のデビュー作。木造長屋をコンクリートのコートハウスで建て替えるという大胆なプランで、狭小の住居に小宇宙ともいうべき豊かな空間をつくりだした。今回の展覧会では、模型とともに初期のアイデアスケッチから設計図面に至る全ての設計資料を一挙公開。名作住宅の誕生のプロセスに迫る。
小篠邸,1981/1984年,兵庫県芦屋市 (撮影:新建築社 写真部)
■ SECTION 2 光
極限までそぎ落とされたようなシンプルな造形。その無地の「カンヴァス」に光や風といった自然の息吹が映し出されることにより、安藤忠雄の目指す空間が生まれます。その意図がもっとも端的に現れてsectionいるのが、一連の教会作品です。ここでは、その代表作を紹介しながら、さらにインスタレーションとして、野外展示場に「光の教会」を原寸で再現します。
光の教会,1989年,大阪府茨木市 (撮影:松岡満男)
1980年代末、大阪の郊外住宅地につくられた教会。厳しい経済条件のもと、極限までデザイン要素を削ぎ落していく中で、暗い堂内に光の十字架が落ちる、象徴的な祈りの空間が実現した。今回の展覧会では、その空間を原寸大のスケールで、野外展示場に再現する。
水の教会,1988年,北海道勇払郡 (撮影:白鳥美雄)
■ SECTION 3 余白の空間
自らを「都市ゲリラ」と称した安藤忠雄が、都市において一貫して試みてきたのは、意図的に「余白」の空間をつくりだし、人の集まる場を生み出すことでした。ここでは、その挑戦のプロセスを、初期のsection小規模な商業建築から、「表参道ヒルズ」、「東急東横線 渋谷駅」、「上海保利大劇院」といった 2000年以降の作品まで、安藤忠雄による都市建築の系譜を俯瞰的に紹介します。
表参道ヒルズ,2006年,東京都渋谷区 (撮影:松岡満男)
上海保利大劇院,2014年,上海/中華人民共和国 (撮影:小川重雄)
■ SECTION 4 場所を読む
大自然に包まれた立地での安藤建築が登場するようになったのは、1980年代末からでした。以降、世界各地に美しくも力強い、安藤建築による風景がつくられていきます。一貫するテーマは、周辺環境と一体化して、その場所の個性を際立たせるような建築です。ここでは、30年余りに及ぶ「直島プロジェクト」の空間インスタレーションを中心に、安藤忠雄による環境一体型建築の系譜を紹介します。
直島 ベネッセハウス,1992/1995年,香川県直島町 (撮影:松岡満男)
直島 ベネッセハウス オーバル,1995年,香川県直島町 (撮影:藤塚光政)
1980年代末、瀬戸内海の直島を「アートの島」として再生する文化プロジェクトが始まった。そこに安藤は、今日に至るまで建築家として関わり続け、合計 7つの建築をつくった。一貫するテーマは、地形と建築の融合と、建物内外の区別なく広がるアートスペースの獲得である。今回の展覧会では、エリア全体の模型と映像とを組み合わせた空間インスタレーションで、「安藤忠雄×直島」の 30余年を俯瞰的に紹介する。
直島の一連のプロジェクト -香川県直島町 -
1992 :ベネッセハウス ミュージアム
1995 :ベネッセハウス オーバル
1999 :南寺(家プロジェクト)
2004 :地中美術館
2006 :ベネッセハウス パーク/ビーチ
2010 :李禹煥美術館
2013 :ANDO MUSEUM
■ SECTION 5 あるものを生かしてないものをつくる
安藤忠雄にとって、歴史の刻まれた建物の再生は、常に挑戦心をかき立てられるテーマでした。ここでは、この古い建物の保存・再生に関わる作品の系譜を、初期の未完に終わったプロジェクトから、国内での実現作品、歴史都市ヴェニスでの「プンタ・デラ・ドガーナ」を中心とする一連の作品、さらに現在パリ中心部で進行中の最新プロジェクトに至るまで一挙公開します。
プンタ・デラ・ドガーナ,2009年,ヴェニス/イタリア
(撮影:© Palazzo Grassi SpA. Foto: ORCH, orsenigo_chemollo)
ヴェニスのサン・マルコ広場の対岸にある、15世紀に起源をもつ歴史的建造物を現代美術館に改造した、安藤忠雄によるリノベーション建築の代表作。ここで安藤は、建物を建設当初のかたちに戻した上で、その中心に新たな現代建築の空間を挿入、新旧の対話の場をつくりだした。さらに、この美術館完成の前後、同じく安藤の手により、大運河沿いの古い建物を改造した「パラッツォ・グラッシ」(2006)、「テアトリーノ」(2013)もつくられている。今回の展覧会では、その大運河の安藤建築シリーズを組み込んだヴェニスの都市模型と共に、プンタ・デラ・ドガーナの1/30スケールの木製模型を展示。過去から現代、未来へといかに時間をつなでいくのか、建築家の思想を紹介する。
■ SECTION 6 育てる
安藤忠雄が稀代の建築家と呼ばれる理由の一つは、建築という枠組みを超えた社会活動への旺盛な取り組みにあります。ここでは完成後の建物の周辺環境整備から、地元大阪でのまちづくり活動、さらには瀬戸内海沿岸、東京湾岸部での環境再生運動まで、建築づくり=環境づくりと考える安藤忠雄の思想を、ドキュメンタリー映像を用いて紹介します。
安藤忠雄プロフィール
【略歴】
1941年 大阪に生まれる
-69年 独学で建築を学ぶ
1969年 安藤忠雄建築研究所を設立
【 受賞】
1979年 日本建築学会賞受賞(「住吉の長屋」)
1985年 アルヴァ・アアルト賞受賞
1989年 フランス建築アカデミー大賞(ゴールドメダル)受賞
1993年 日本芸術院賞受賞
1995年 プリツカー賞受賞
1996年 高松宮殿下記念世界文化賞受賞
2002年 アメリカ建築家協会(AIA)ゴールドメダル受賞
ローマ大学名誉博士号取得
京都賞受賞
2003年 文化功労者認定
2005年 国際建築家連合(UIA)ゴールドメダル受賞
レジオン・ドヌール勲章(シュバリエ)受章
2010年 ジョン・F・ケネディーセンター芸術金賞受賞
第4 回後藤新平賞受賞
文化勲章受章
2012年 リチャード・ノイトラ賞受賞
2013年 フランス芸術文化勲章(コマンドゥール)受章
【名誉会員 】
1991年 アメリカ建築家協会(AIA)名誉会員
2002年 イギリスロイヤルアカデミーオブアーツ 名誉会員
【教職】
1987年 イェール大学客員教授
1988年 コロンビア大学客員教授
1990年 ハーバード大学客員教授
1997年 東京大学教授
2002年 同済大学(上海)名誉教授
2003年 東京大学名誉教授
2005年 東京大学特別栄誉教授
カリフォルニア大学バークレー校客員教授
【開催概要】
「安藤忠雄展―挑戦―」
会期:2017 年 9 月27 日 . → 12 月18 日 .
場所;国立新美術館 企画展示室1E +野外展示場【東京・六本木】
住所:〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 → map
休館日:毎週火曜日
開館時間:10:00 ~ 18:00(金曜日・土曜日は20:00 まで)※入場は閉館の30 分前まで
主催:国立新美術館、TBS、朝日新聞社 共催:安藤忠雄建築展実行委員会
協賛:サンケイビル、サントリーホールディングス、積水ハウス、積和不動産、大和ハウス工業、
アマナ、臥龍山安養院、ビギ、上海元祖夢世界置業、上海新華成城資産管理、南山人壽、
Akio Nagasawa Gallery、Aurora Group、CC Kuo、Chateau la Coste、Fred Eychaner、Richard Sachs、
Yoshii Gallery New York、福武財団、ベネッセホールディングス、大林組、鹿島建設、竹中工務店、
きんでん、大光電機、乃村工藝社、西松建設、長谷工コーポレーション、まこと建設、安藤忠雄建築研究所、
アトリエ安藤忠雄
協力:アイカ工業、インターオフィス、カッシーナ・イクスシー、元旦ビューティ工業、前田建設工業、
ユニオン、LIXIL、 TOTO、YKK、YKK AP
後援:TBS ラジオ
観覧料:当日 一般1,500 円(税込)、大学生1,200 円(税込)、高校生800 円(税込)
前売/団体 一般1,300 円(税込)大学生1,000 円(税込)、高校生600 円(税込)
※団体券は国立新美術館でのみ販売(団体券の適用は20 名以上)
※中学生以下および障害者手帳をご持参の方(付添の方1 名を含む)は入場無料
※ 11月3日( 金・祝)、4日( 土)、5日(日) は高校生無料観覧日( 学生証の提示が必要)
前売券販売期間:2017年6月26日(月) ~ 9月26日(火)
( 国立新美術館は6月26日(月)~ 9月25日(月) まで) 9月27日( 水) 以降は、当日券の販売
アクセス
東京メトロ千代田線 乃木坂駅青山霊園方面改札6 出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線六本木駅4a 出口から徒歩約5 分
都営地下鉄大江戸線六本木駅7 出口から徒歩約4 分
展覧会ホームページ
http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/
国立新美術館 Kokuritsu-Shin-Bijutsukan
http://www.nact.jp/
(文:インテリア情報サイト編集部-1 / 更新日:2017.08.19)