酒屋「桑原商店」のクリエイティブチームが考えた新型コロナウイルス感染防止対策営業再開


Photo:森孝介

 

 

飲食店・アートギャラリー・倉庫を併設する酒屋「桑原商店」の
クリエイティブチームが考えた
飲食営業再開に伴う新型コロナウイルス感染防止対策で
食部門の営業を9月15日(火)より再開

 

 

大正4年の創業以来、105年にわたり商いを行ってきた酒屋「桑原商店」(株式会社桑原商店 代は、本年2月より休業していた飲食部門の営業を、9月15日(火)より再開しました。


新型コロナウイルス(COVID-19)の状況下で、持続可能な商いのために、お客さま及び、一緒に働く家族の安心安全な環境を整えることを第一使命に、業界のガイドラインを徹底的に遵守した上で、「桑原商店としてのローカルディスタンス」という店舗独自のルールの導入も図っています。


2018年12月のリニューアルオープン同様、スキーマ建築計画(内装設計)、MOTOMOTO inc.(ストアサイン計画・グラフィックデザイン)、高本設計施工(施工管理)の3社を中心に、長期化するwithコロナ、その後のアフターコロナの店舗のありかたも視野に入れつつ、クリエイティブなアプローチで検討を進めました。それらの対策をお客さまに強要する雰囲気を可能な限り出すことなく、柔らかい空気感の中で安心して過ごせる店舗空間になるようにバランスを取ることにも注力しました。ストレスの多い日々、短時間でも、桑原商店で日本酒を嗜み、酔い時間をお過ごしいただきたいという思いで、クリエイティブチームとともに、桑原商店を営む桑原家4世代で取り組んでいます。

 

・設計はスキーマ建築計画の長坂常 大正4 年創業の西五反田の酒屋「桑原商店」飲食店・アートギャラリー・倉庫 併設でリニューアルオープン

 

 

Photo:森孝介



基本的な三密回避対策について
ソーシャルディスタンスの確保、サーモグラフィによる検温、小皿でのお料理提供、通常の50%の人数制限の実施の
他、随時、状況に応じたルールを設け運営を行います。詳細はホームページよりご覧ください。 
http://to-plus.jp


デザイン
スキーマ建築計画は、大家族が作り上げるお店、桑原商店のために、店内に多様されているコンパネの黄色やスチール
ラックの緑との相性を考え、さらに虫よけやコロナよけとして、防虫ビニルカーテンを使い厨房をガードするなど、全体のデザインを再構成しました。MOTOMOTO inc. は、桑原商店のビジュアルアイデンティティー(VI)が文字そのものであることから、注意喚起のサインも重要なVI要素とし、今回も文字を基本としたデザインにしました。お酒とコミュニケーションを楽しむ場ではありますが、安全安心を優先に、注意事項の記載を柔らかくまとめています。また、今後、現在の状態が「普通」となることも想定し、その場限りの対策ではなく、店舗・空間としての魅力や、お客さまの楽しい気分を損なわない、そんな空間を意識しました。

*代々ここで営まれてきた場所性を踏まえ、2018年のリニューアルオープン時、シンボルは作らずに、VIは店名と住所をセットにしたロゴで、ファサードや店内POP、ショップのツール類も全て文字を基本としてデザインしました。

◎桑原商店の店内グラフィックデザインは、以下の賞に入選しています。
東京アートディレクターズクラブ(東京ADC)
「Art Direction Japan 2019 / 日本のアートディレクション 2019」
・CI.マーク&ロゴタイプ カテゴリー:入選
東京タイプディレクターズクラブ(東京TDC)
「Tokyo TDC, Vol.31 ‒ The Best in International Typography & Design」
・Mark & Logotype/CorporateStationery/Branding カテゴリー:入選
・Small Graphics カテゴリー:入選
日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)
「Graphic Design In Japan 2020」
・Integrated Design カテゴリー:入選


店舗デザイン上の工夫
建築、グラフィックデザイン、運営オペレーションの改善を含めて、計画段階より一体的な検討を行い対策工事に反映
しています。下記取り組みは一例で、詳細はホームページに掲載しています。
・感染防止のパーテーション機能と、注意事項や利用システムなどのサイン計画を一体化した展開を図りました。
・導線を整理し、店内の床面に統一したデザインルールで「立ち位置」のサインを添付することで、ソーシャルディスタンスの確保や人数制限を図ります。
・トイレの手洗い水洗を医療用で用いられる、足踏み式タイプに変更し、蛇口への接触機会をなくしました。
・非接触のアルコール消毒液など、明快なグラフィックデザインにより視認性を高くし、店内各所に設置しています。
 (感染防止の表記は、オレンジ色の用紙を使い、通常の案内はこれまで同様のグレーの用紙で色分けしています。)
・換気扇の増設を行い、店内4方向全ての換気が可能となりました。これにより、約3分で店内の空気の入れ替えが可能となります。
・立ち飲みテーブルは、サワーケースを転用しているため、状況に応じた増減がすぐに対応可能です。
 


桑原商店について
大正4年に酒販店「常徳屋」として始まり、昭和25年より株式会社桑原商店に変更し、現在に至ります。2018年にリニューアルオープンした現在の店舗は、約45年間、酒屋の倉庫として活用していた場所に構えられ、空間設計を手がけたスキーマ建築計画の長坂常氏は、設計のみに留まらず、「桑原商店」を経営する家族(4世代にわたる家族)とのワークショップなどを通して、企画の段階から店舗の計画に携わりました。また、デザイン、食に携わる専門の方々、各地の酒蔵及び加工品メーカー、アーティストなど多様なジャンルの方々と協働のもと、施工は家族総出のDIYも取り入れるプロセスを経ています。酒、食、アートなどの取り扱い商品は、文化的な背景や地域性を尊重しセレクトしています。約200種類の日本酒は、大型冷蔵ショーケースにて通年4℃で保管し、照明もLEDを導入するなど、徹底した品質管理の中でストックを行います。飲食スペースでは、その中から週替わりの約40種類の日本酒をお客様とご相談しながらお好みの量とこだわりの酒器で召し上がっていただき、肴は、日本各地から選び抜いた加工品をベースにアレンジしたお料理をご提供します。この秋からは、永井酒造(群馬県)のArtist Series、矢尾酒造(滋賀県)など新たなラインアップも増え、充実の品揃えでお客様をお迎えします。
 


|関係者プロフィール

株式会社 桑原商店 代表取締役 桑原 康介(くわばら こうすけ)
株式会社アートフロントギャラリー、NPO法人越後妻有里山協働機構を経て、2014年より家業の酒販店にアートやデザインをマネジメントする部門を新たに設け、各プロジェクトを遂行中。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」を中心に、「瀬戸内国際芸術祭」「中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス」など、各国際芸術祭に携わる。特に越後妻有には10年近く居住しながら、新商品開発、着地型観光、各種文化事業などに行政への出向も含めて従事した「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」ではジェネラルマネージャーに就任。これまでデザインマネジメントに携わった各アイテムは、グッドデザイン賞を始めとする国内外のデザイン賞を多数受賞。デザインマネジメントやアートを通した地域活性化に関する講演や各大学での講義も行う。自由が丘東地区再開発準備組合副理事長、とおかまちプロモーション大使。

建築家 長坂 常(ながさか じょう)
スキーマ建築計画代表。1998年東京藝術大学卒業後にスタジオを立ち上げ、現在は北参道にオフィスを構える。家具から建築、町づくりまでスケールも様々、ジャンルも幅広く手掛ける。どのサイズにおいても1/1を意識し、素材から探求し設計を行い、国内外で活動の場を広げる。既存の環境の中から新しい価値観を見出し「引き算」「知の更新」「半建築」など独自な考え方で、建築家像を打ち立てる。代表作 BLUE BOTTLE COFFEE / 桑原商店 / HAY など

 

【店舗概要】
店舗名:桑原商店
営業時間:11:00 - 21:00 (飲食 17:00 - 20:30L.O.) 日曜・祝日定休
住所:141-0031 東京都品川区西五反田2-29-2
TEL:03-3491-4352(店舗直通)
取扱商品:日本酒、クラフトビール、焼酎、リキュールなどを中心とするアルコール類、
             ソフトドリンク、各地の加工品、総菜、アート作品
運営会社:株式会社 桑原商店   http://to-plus.jp/ 、有限会社酒蔵一番
 空間設計:長坂常 / スキーマ建築計画   http://schemata.jp/
施工管理.:高本貴志 / 高本設計施工   
ストアサイン計画・グラフィックデザイン:松本健一 / MOTOMOTO inc.   http://www.moto-moto.jp/

(文:制作_インテリア情報サイト編集部-3  /  更新日:2020.09.16)

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