世界最大規模の家具見本市「ミラノ・サローネ」は、今年で50周年を迎え、2011年4月12日から17日までの6日間、イタリア・ミラノのフィエラ(本会場)とフォーリ(市内会場)で開催されました。
新しい日本の為にデザインができることと題し、シリーズで特集していきます。今回はミラノサローネに出展した日本のテクノロジーメーカー「東芝」「キャノン」「カネカ」「パナソニック」「INAX」を取材しました。
ミラノ市内トルトーナ地区で行われた東芝の展示。今年は、LED照明器具を使ったインスタレーション「Luce Tempo Luogo」を発表していました。日本語に訳すと「光・時・場」の意。この空間デザインを手がけたのは、ダン・ドレル(イタリア)、リナ・ゴットメ(レバノン)、田根剛(日本)の3人を中心とする多国籍建築家集団「ドレル・ゴットメ・タネ」です。
会場は、3つのシーンを表現したインスタレーションで構成。まず、入口は真っ白なトンネルの中に、どこまでも長く続いていきそうな一筋の光を映り込ませた空間の「ENTRANCE」。白い空間を通り抜けた先には、小石を敷き詰めたスペースに水を張り、日中には太陽の光が差し、夜間にはLEDが水の波紋に光を当てる「COURTYARD」。
まるで、枯山水にあえて水を注ぎ込んだような、静かなスペースを抜け、場内に。その真っ暗な空間は、天井から流れる水のカーテンに、無数のLED照明を使い0.何秒かで点滅するストロボを当て、雨のしずくを表現する「INSIDE」。場内中央の通路を歩きながら、雨音と幻想的な光の演出を体感することができます。
白と黒、静と動、水と光。極限にまで要素をそぎ落とした、“アート”インスタレーションは、東芝公式ホームページによれば、「場所の記憶を呼び覚まし、“そこにしかない光”を表現しながら、皆様の記憶や未来への期待を刺激する空間を創出」するとのことですが、このミニマムな空間がイメージさせるものは、日本的な陰翳礼賛というよりは、むしろメリハリのきいたグローバルなミニマリズム、という印象でした。
(文:宮内 有美 / 更新日:2011.05.09)