デザインを考えるとき、過去から引用することは多いですね。それを効果的に活かすためには、その過去のものの持つ背景や思想についてより深く知り、考え、理解することが大切です。「もう一歩深く知るデザインのはなし」は、デザインに関する事柄からいくつかを取り上げ、その周辺や様々な背景について考えることで、読者の方々に「もっと知りたい」と思っていただくことを目指しています。
今回のテーマは「日本におけるバロック」。日光東照宮を例に、「華やか」で「派手」で「暑苦しい」日本のデザインを見てみたいと思います。
「真面目で繊細」なだけが日本じゃない
「日本らしさ」と言えば?「シンプル」「簡素」「わびさび」「禅」…それらはもちろん世界に誇る日本の財産ですが、それだけが日本らしさではありません。それと対極の、過剰なほどの華やかさで愛される建物も日本には多くあります。その代表が日光東照宮。ここでは東照宮を例に、日本におけるバロック的なデザインについて考えてみます。
もう一歩深く知るデザインのはなしvol.26/日本におけるバロック
神を崇めるためのデザイン
日光東照宮は、家康を神として祀る霊廟として建てられました。徳川家は「自分たちは神の末裔である」と宣言することで、政権の繁栄をはかったのです。そのデザインで最も注目すべきは、やはり建物表面を不気味なほどびっしりと覆う彫刻の数々。おびただしい、しかも精巧な彫刻たちには、当時の人たちの熱い想いがこめられています。
もう一歩深く知るデザインのはなしvol.27/日本におけるバロック
祭りという「非日常」を演出する
たくさんの装飾彫刻たちが、華やかでいて不気味な非日常感を醸し出す日光東照宮。あのような表現が生まれたのは、東照宮が家康を祀るための神社だったからです。東照宮では毎年家康の命日に祭りが開かれ、多くの人が見物におしかけ「家康という神」への信仰心を新たにしました。あの彫刻たちは、まさに「祭りの高揚感」を演出していたのです。
もう一歩深く知るデザインのはなしvol.28/日本におけるバロック
いま評価される「かざりの美」
日光東照宮以外にも、豪華絢爛な意匠が印象的な建築物はあります。例えば箱根の「富士屋ホテル」や、目黒の結婚式場「目黒雅叙園」など。ともに、東照宮に通じるような豪華絢爛さが魅力です。私たちは、こういう派手でごてごてしたインテリアに戸惑いながらも、時にどうしようもなく惹かれてしまったりします。それはいったい何故なのでしょうか。
もう一歩深く知るデザインのはなしvol.29/日本におけるバロック
この記事は2012年に掲載した「もう一歩深く知るデザインの話」をシリーズごとにまとめたものです。
-MoMA Design Store(オンラインストア)
(文:maki / 更新日:2016.02.25)