一脚一脚、木と語らうように椅子をつくる「徳永家具工房」
カンナフィニッシュの椅子、tatara
兵庫県の三木市、のどかな山間の田園にある「徳永家具工房」。徳永家具工房がつくりあげる家具は美しい曲線とカンナで仕上げる肌さわりの良い上質な椅子。基本デザイン・制作指揮は、木工家の徳永順男氏が手掛けています。
徳永家具工房の家具はケヤキの木から作られます。豊かな四季に育まれた美しい木目、豊富に含まれる樹脂が生む色艶と耐湿性、時間とともに味わい深く変化する木肌、ほどよい堅さと長く使える丈夫な組成、ケヤキにはこのような特徴があり古くから民家の鴨居や上がり框、和室の床や柱、寺社建築などでつかわれてきました。しかし現在、大量生産・高率化が求められケヤキは既製家具にはあまり使われていません。多様な木目は木を繋ぎ合わせた集成材を作りづらく、堅い木質は機械生産には向いていないためです。徳永家具工房では機械による一様な加工ではなく、古くから日本人がやってきたように、ひとつひとつ手で家具をつくりあげます。
パーソナルチェア F-type
そこで使われるのが古来から伝わる日本独自のたたら製鉄法でつくられる玉鋼(たまはがね)のカンナです。兵庫県三木市の熟練の鍛冶屋・大原氏のカンナは職人の魂が込められた一品。このカンナと出会いカンナフィニッシュの椅子、tataraが誕生しました。椅子の表面に合わせ鍛冶屋・大原氏と徳永順男氏との共同で独自に開発されたカンナの数々は既存のカンナには無いオリジナル形状のもの。このカンナを使い世界で唯一の極上の椅子を作り上げます。
独特のフォルムを持つ独自に開発されたカンナの数々/ 徳永順男氏
木製家具で一般的なサンドペーパーフィニッシュは、こねるように木の表面を擦り、塗膜を馴染ませるために木肌をならす仕上げです。一方、カンナフィニッシュは木の素肌をさらします。玉鋼のカンナで削られた木肌は油分が浮き出てうっすら輝き、木目本来の透明感や美しい色艶が引き出されます。
また、一般的なカンナは、木の順目逆目にあわせて削る方向を変えなくてはならないため、いくつもの短い直線の重なりで曲線をつくります。一方、玉鋼のカンナは順目逆目にかかわらず部材の端から端までワンストロークで削りきれるため、一本の長い線で曲線をつくることができます。そのひと振りの線は人の手が描く曲線そのもの。だからこそ、tataraのフォルムはいきいきと躍動し、使う人の身体に馴染むのです。
ダイニングチェア C-type / tatara F-type
徳永家具工房 公式サイト http://tokunaga-furniture.com/
徳永順男
1974 岩手大学農学部卒業後、無形文化財保持者 竹内碧外氏に師事
1983 北浜セントラルギャラリーにて家具展、日本伝統工芸近畿支部展受賞
1985 日本工芸会正会員認定
1990 兵庫県吉川町に新工房設立
2002 太宰府天満宮千百年祭に御神宝「桑木画棋局」を制作
2003 東京国立近代美術館、現代の木工家具展に招待出品 / 韓国清州国際ビエンナーレに招待出品
2007 三木市芝町にギャラリー「日月くらぶ」開設
(文:インテリア情報サイト編集部-3 / 更新日:2011.12.25)