静嘉堂文庫美術館
「岩崎家のお雛さま」開催
2021年 2月20日(土)~ 3月28日(日)
世田谷の静嘉堂文庫美術館では、2021年 2月20日(土)~ 3月28日(日)の期間、岩﨑家の雛人形・雛道具を集めた「岩崎家のお雛さま」を開催します。
3月3日は桃の節句。かわいらしい人形や小さな道具を飾り楽しむ「雛祭り」の風習は、江戸時代に広まり、現代まで
連綿と続いています。三菱第四代社長・岩﨑小彌太(1879~1945)が孝子夫人(1888~1975)のために誂えた雛人形は、京都の人形司・丸平大木人形店によるものです。内裏雛は、白くつややかで丸い顔が愛らしい幼児の姿をしています。岩﨑家の替紋である花菱文が各所にあしらわれた雛道具は精緻に作られ、段飾りに花を添えたことでしょう。これら贅を尽くした岩﨑家の雛人形・雛道具は当時の技術の粋を集めた、貴重な美術工芸品といえます。
見どころ1 雛祭りのはじまり
「節句」は「節供」とも書かれ、季節の節目となる「節日(せちにち) 」やその日に供える「供御(くご) 」(飲食物の意)を意味しました。後に人日(じんじつ) (1月7日)、上巳((じょうし) 3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽((ちょうよう) 9月9日)を「五節供(五節句)」と称し、江戸時代になると「五節供」は式日と定められました。3月3日の上巳の節句には、男雛女雛のお内裏さまや三人官女などの人形を飾ります。これは、古来、神事に穢れを移した「形代(かたしろ) 」や平安貴族の子供たちの「ひいな遊び」(ままごとのこと)を起源とします。江戸時代にはお雛さまを飾る風習が定着しますが、初期の雛人形は「立雛」のような質素な紙製で、段飾りもありませんでした。
「立雛」1
江戸時代後期(18~19世紀)
引目鉤鼻の顔をした次郎左衛門頭(じろうざえもんがしら) の大きな立雛。岩﨑家に伝来した本作は、現存する江戸時代の「立雛」のなかでも最大級(像高65.0㎝)です。「座雛(すわりびな) 」が定着する前は、本作のような立雛が一般的でした。
「享保雛」
江戸時代後期(18~19世紀)
江戸時代中期、享保年間(1716~36)を中心に町方で流行した面長な内裏雛。豪華な衣装を身にまとい、ボリュームのある身体をしています。このスタイルの内裏雛は享保年間以後も製作され続けました。
『江戸名所図会』
第一巻 天保5年(1834) 木版墨摺全二十冊のうち一冊
斎藤月岑(げっしん) らによって編纂された江戸および近郊の絵入り地誌。七巻二十冊。挿図の「十軒店雛市(じっ けん だな ひな いち) 」は、現在の東京都中央区日本橋室町に所在した「十軒店」という雛人形などを販売する店が軒を並べた通りのことです。人形を買い求める人々の賑わいが見てとれます。
見どころ2 岩﨑家のお雛さま ― 近代の雛人形の白眉
岩﨑家雛人形は、三菱第四代社長・岩﨑小彌太が孝子夫人のために京都の人形司・丸平大木人形店に依頼し、誂えたものです。「丸平」は谷崎潤一郎の小説『細雪』にもその名が登場する、歴史ある名店で、当主は代々「大木平藏」を襲名します。岩﨑家雛人形の内裏雛は、まん丸いお顔が愛らしい幼児の姿(稚児雛)で作られています。その頭は(かしら) 名人・十二世面屋庄次郎(通称「面庄」)によるもので、岩﨑家雛人形は当時の技術の高さを示す貴重な美術工芸品といえます。これらの雛人形は、雛祭りの折、東京・麻布の鳥居坂本邸に飾られ、邸宅を訪れた人々をさぞかし楽しませたことでしょう。小彌太が詠んだ俳句「老の眼を細めて見るや雛祭り」からは、雛祭りの様子をほほえましく眺める小彌太の姿が偲ばれます。なお、岩﨑家雛人形は2018年、桐村喜世美氏により当館に寄贈されました。
五世大木平藏製 「岩﨑家雛人形」のうち内裏雛
昭和時代初期(20世紀)
白く丸い顔の幼児姿の内裏雛。鴛鴦文(えんおうもん) があしらわれた黄丹袍(おうにのほう) は皇太子の装束を想起させます。女雛の表着(うわ) は紅梅地に牡丹文を織り(ぎ) 出したものです。宝冠には、岩﨑家の替紋である花菱文が表されています。
五世大木平藏製「岩﨑家雛人形」のうち三人官女
昭和時代初期(20世紀)
岩﨑家雛人形のうち、内裏雛に仕える三人官女です。向かって右から「長柄銚子(ながえのちょうし) 」「嶋台(しまだい) 」「加銚子(くわえちょうし) 」(提子(ひさげ) とも称する)を持っています。「嶋台」の奥に坐るのは年長の官女です。
五世大木平藏製「岩﨑家雛人形」のうち五人囃子
昭和時代初期(20世紀)
能(武家の正式な芸能)の地謡(じうたい) と囃子方(はやし かた) である笛・小鼓・大鼓(大革)・太鼓で構成された五人囃子。岩﨑家の替紋、花菱文を各所にあしらった装束を身に付けています。
「菱台」
昭和時代初期(20世紀)
岩﨑家雛人形に含まれる雛道具の一つ、五段の菱餅をのせる菱形の台です。花菱文は金蒔絵で表されています。菱餅の配色や重ね方は地方により異なるようです。
「犬筥」
江戸時代後期( 18~ 19世紀)
伏せた犬の形を模した紙製の置物(張子(はりこ) )で、もとは祓や魔除けのまじないに用いられました。江戸時代、婚礼道具や雛道具の一つとして普及し、雛祭りにも飾られるようになりました。本作は、江戸時代の犬筥のなかでも最大級で、名家の家紋があしらわれています。桐村氏寄贈品。 ※本作は岩﨑家伝来品ではありません。
このほか、本展では、春を愛でる絵画・工芸品も合わせて展示します。日本画家・前田青邨(1885~1977)に絵の手ほどきを受けた小彌太が描いた絵画や蒐集した名品、静嘉堂の庭園で花開く梅もお楽しみください。そして、春爛漫の本展は、丸の内・明治生命館への展示ギャラリー移転に向けた、現在の地で開催するセカンドラスト(最後から2番目)の展覧会です。
【開催概要】
「岩崎家のお雛さま」
会期:2021年 2月20日(土)~ 3月28日(日)
休館日:毎週月曜日
会場:静嘉堂文庫美術館SEIKADO BUNKO ART MUSEUM
〒 157-0076 東京都世田谷区岡本 2-23-1 ⇒ map
開館時間:午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料:一般1000円、大高生及び障害者手帳をお持ちの方(同伴者1名を含む)700円
中学生以下無料
主催 :公益財団法人静嘉堂
T E L:050-5541-8600(ハローダイヤル) ※英語版も共通
ホームページ:http://www.seikado.or.jp
※新型コロナウィルス感染予防及び防止のため、予定を変更する場合がございます。当館のホームページ等で最新の情報をご確認下さい。
※発熱等、風邪の症状がある方は、ご来館をお控え下さい。館内では、マスク着用・咳エチケットの励行にご協力下さい。
静嘉堂文庫美術館について
静嘉堂文庫美術館は、三菱創業者として知られる岩崎彌太郎の弟で、第2代の社長をつとめた岩﨑彌之助と、その息子で第4代社長の小彌太の父子二代にわたる蒐集品を収蔵・展示する美術館です。静嘉堂(文庫と美術館)の所蔵品は国宝 7件・重要文化財84件を含む和漢の古典籍およそ20万冊と東洋古美術品約6,500件からなり、世界に3点のみ現存する国宝「曜変天目」は、(中国・南宋時代)茶道具そして中国陶磁の至宝として知られています。
(文:制作 PR-M _PR制作部-1 / 更新日:2020.12.19)