【フォト・ レビュー】クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"

 

 

【フォト レビュー】
21_21 DESIGN SIGHT企画展
「クリストとジャンヌ=クロード“包まれた凱旋門”」

 

 

「クリストとジャンヌ=クロード」とは、環境アート作品を作成していた芸術家夫妻が活動時に用いたネームです。なんと二人は1935年6月13日、同じ年の同じ日に生まれました。それを記念してなのか、本日(2022年6月13日)から、21_21 DESIGN SIGHTでは、企画展「クリストとジャンヌ=クロード“包まれた凱旋門”」を開催します。

 

二人は1958年にパリで出会い、翌年に結婚、クリストとジャンヌ=クロードとして2人は公共空間など環境アート作品の活動を開始します。

本展は、二人の人生において貫かれたものを紐解いた展覧会です。

同じ年同じ日ですが、別々の場所で生まれたクリストとジャンヌ=クロード。クリストはブルガリア王国ガブロヴォ生まれでソフィアの美術学校とウィーン美術アカデミーで学んだ後、58年パリに移住。初期は肖像画と缶や工業製品などを布で梱包する作品を手がけました。ジャンヌ=クロードはフランス領モロッコカサブランカで生まれ、チュニス大学でラテン語と哲学を専攻。夫婦の初対面は、クリストが1958年10月にパリでジャンヌ=クロードの母親の絵を描いたときでした。その後、2人は共同で作品を作るようになります。

64年にアメリカ・ニューヨークに移住し、道路から建物、橋、そして自然環境を舞台とした大掛かりなプロジェクトに着手。
 



オーストラリア・シドニーの海岸を布で覆い、隠された風景の記憶を喚起させる《包まれた海岸線》(1969)、コロラド州ライフルにある幅およそ400メートルの渓谷にオレンジ色の布を掛け、ハイウェイを遮った《ヴァレー・カーテン》(1972)を手がけるなど、二人は世界中で驚きに満ち溢れたプロジェクトを次々と実現させていきます。

日本では、1991年に茨城とカリフォルニアの一部地域を同時に巨大な傘で覆う《アンブレラ 日本=アメリカ合衆国 1984-91》で作品が披露されました。

 

そのほか主な作品に、フロリダ州マイアミの島の周りをピンクの布で囲んだ《囲まれた島々》(1983)、パリのセーヌ川に架かる橋を布で包んだ《ポン・ヌフの梱包》(1985)、構想から完成までに25年を費やしたドイツ・ベルリンの《梱包されたライヒスターク》(1995)、ニューヨーク・セントラルパークの歩道37キロメートルに、サフラン色の布を垂らしたスチール製の門を7503本設置した《門》(2005)などがあります。

それぞれのプロジェクトは恒久的でないので、解体後は写真や映像、ドキュメンタリー映画などの記録が多く残されているので、会場で閲覧が可能です。

見慣れた風景に変化を与える2人の作品は、梱包と遮蔽の構造が特徴。助成金に頼ることなく自ら資金を調達し、地理的・政治的な交渉や住民らへの協力の呼びかけといった、プロジェクトを完成させるまでのプロセスすべてを含めて作品とし、社会と芸術の接点を主題としています。

 



2009年にジャンヌ=クロードが74歳で逝去。その後もクリストは単独で、二人が夢見たプロジェクトの実現に向けて活動を続けました。

クリストが黙々と“包まれた凱旋門”を描き続ける映像
 



プロジェクトのひとつ「包まれた凱旋門」は2020年に実現予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大のため延期となり、クリストは完成を見ることなく同年5月に84歳で他界しました。

没後、ポンピドゥー・センターで2人の回顧展「Christo et Jeanne-Claude: Paris! 」(2020)が開催。

 

その後、多くの賛同者の協力のもと、構想から60年という歳月をかけて、2021年9月に実現の日を迎えた、パリの凱旋門を包むプロジェクト《L'Arc de Triomphe, Wrapped》(1962〜)。

 

この「包まれた凱旋門」の制作背景と実現に向けた長い道のりに焦点をあて、その記録をまとめたものが21_21 DESIGN SIGHT企画展「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」です。

「包まれた凱旋門」とは、クリストとジャンヌ=クロードが1961年パリ出会い、創造活動の一歩を踏み出してからの構想で、エトワール凱旋門が16日間にわたり、銀色のコーティングが施された再生可能な青い布25,000m2と、3,000mもの赤いロープで包まれたプロジェクトです。

会場全体がドキュメンタリー映画のような展覧会で、2021年9月、パリのエトワール凱旋門が布で覆わて集まった人々の歓声に包まれた感動は映像からも伝わります。悲願の夢でもあったプロジェクトが現実のものとなった瞬間の感動です。

多くの記録画像や映像を使って、本展ディレクターで映像作家でもあるパスカル・ルランのシネマティックな表現により、その場に居合わせなかったのが残念でしかたがなかった、そう思わせるものでした。

 

そしてもう一つの感動は、それに関わった人々が長い年月をかけ、さまざまな困難を乗り越えて実現へと向かう、ポジティブで力強い姿勢です。夢の実現に向けたクリストとジャンヌ=クロードの姿勢は、二人の強い思いの元に集まってきた仲間たちの存在があるからこそ、今までだれも見たことのない作品を生み続けることができたとも言わせるプロジェクトチームでした。

会場には壁一面に拡大された施工図の展示、実際に使われた布の展示などもあり、アート作品ですが、建築物の作品を見るような楽しみもあります。アートやデザインのみならず日常におけるさまざまなチャレンジにも勇気を与えてくれる、そんな展覧会です。


21_21 DESIGN SIGHTでは、2023年2月12日まで開催します。ご興味ある方は是非足をお運びください。

 

また6月23日(木)に本展オープニングトークが下記の通りオンラインにて開催されます。ご興味ある方は是非ご参加ください。

オープニングトーク 「『包まれた凱旋門』の実現とこれから」
日時:6月23日(木)20:00 - 21:30
場所:Zoom配信
出演:パスカル・ルラン(展覧会ディレクター)
   ヴラディミール・ヤヴァチェフ(クリスト・アンド・ジャンヌ=クロード財団)
   ロレンツァ・ジョヴァネッリ(クリスト・アンド・ジャンヌ=クロード財団)
        川上典李子(21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクター)
言語:日本語、英語(逐次通訳)
特別協賛:三井不動産株式会社
詳細はウェブサイトにてご覧ください。
http://www.2121designsight.jp/program/C_JC/events/220623.html


 

【開催概要】
会期:2022年6月13日(月)- 2023年2月12日(日)
休館日:火曜日、年末年始(12月27日 - 1月3日)
開館時間:10:00 -19:00(入場は18:30まで) ※入場予約制の可能性あり
       (6月13日(月)-17日(金)は13:00-19:00(入場は18:30まで)
入館料:一般 1, 200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料 *ギャラリー3 は、入場無料
会場:2 1_ 21 DESIGN SIGHT
   東京都港区赤坂 9 -7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン ⇒ map
主催:2 1_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、港区教育委員会、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
特別協賛:三井不動産株式会社
協賛:株式会社イッセイミヤケ
特別協力:クリスト・アンド・ジャンヌ=クロード財団
展覧会ディレクター:パスカル・ルラン
企画協力:柳 正彦

 

21_21 DESIGN SIGHT 21_21 DESIGN SIGHT

 東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
 TEL: 03-3475-2121
 http://www.2121designsight.jp/

 

 

 

 

 

 

インテリア情報サイトが運営する求人情報サイトインテリアのお仕事求人サイトをご紹介します。


全国の家具/日用品/住宅設備メーカーの営業・ショップスタッフ・バイヤー・インテリアコーディネーター・ショップデザイナー・プロダクトデザイナーなどインテリア業界の求人を紹介しています。 
→ 
インテリアのお仕事求人サイト

求人担当者様はこちらをご覧ください。 → 採用担当者様へ

 

その他、インテリア情報サイトに、PR・広告掲載を希望されます企業様はこちらからお問合せください。
 →  お問合せ

 

 


 

(文:制作_インテリア情報サイト編集部_3  /  更新日:2022.06.13)

この記事へのメンバーの評価

  
  • まだコメントがありません。

バックナンバー

Knowledge and Skill

Group Site

ページトップへ