21_21 DESIGN SIGHT 企画展
「もじ イメージ Graphic 展」
2023年11月23日(木・祝)~ 2024年3月10日(日)
21_21 DESIGN SIGHTでは、 2023年11月23日より企画展「もじ イメージ Graphic 展」を開催します。
展覧会ディレクターには、グラフィックやタイポグラフィに関する数々の著書を手がける編集者の室賀清徳、グラフィックデザインの研究を行う後藤哲也、そしてグラフィックデザイナーの加藤賢策の3名を迎えます。
21_21 DESIGN SIGHT
http://www.2121designsight.jp/
本展では、近代のグラフィックデザインの歴史を探りながら、特にDTP(Desktop Publishing)と呼ばれる、パソコン上で出版物や印刷物のデータ制作の多くの過程を行うことが主流となった1990年代以降のグラフィックデザインを、日本語の文字とデザインの歴史を前提に紐解いていきます。
展示の中心となるのは国内外約 50組のグラフィックデザイナーやアーティストによるクリエイションの数々。漢字や仮名の使い分けや、縦横自在の書字方法、ルビといった特有の表現方法をもち、文字とイメージの混ざり合いのなかで発展してきた日本のグラフィック文化が、グローバルなデジタル情報技術とどう向き合い、何を生み出してきたか、そして今どのような可能性をみせているかを「造形性」「身体性」「メディア」など13の現代的なテーマに分けて紹介します。
日々大量のビジュアル情報が飛び交い、つくり手も受け手も効率性を重視せざるを得ないことの多い現代において、グリッドを超えて縦横無尽に浮遊する文字やイメージのあり方、それらの結合や合間にたちのぼるエネルギーを感じることで、あらためてグラフィックデザイン本来の楽しさや豊かさを発見する機会となります。
石塚 俊「MOT アニュアル2019『Echo after Echo:仮の声、新しい影』」(2019)
■見どころ
1.グローバル時代における日本のグラフィックデザインの可能性について、日本の文字を起点に、国内外約50組のデザイナー、アーティストによるプロジェクトを通じて考えます。
2.デジタル化が進んだ90年代以降を中心に、グラフィックという領域がもつ本来的な創造性に光を当てることを試みます。
3.グラフィックを、印刷物、デジタル、空間といったメディアで区別することなく、歴史的かつ同時代的なテーマで捉え直します。
4.ポスターや書籍、看板の実物展示から、壁面を使った大型出力展示など、さまざまな手法で250点以上のグラフィック作品を展示します。
■ ディレクターズ・メッセージ
現代のグラフィックデザインは国際的に均質化が進んでいます。世界のだれもが同じアプリケーションを使い、情報整理やそれによる問題解決を低コストで行う。そんなメカニズムがデザインの世界を支配しているようです。けれども、アートと技術の間で発達してきたデザインには論理では説明できない感性的な側面があります。また、英語の「グラフィック」や「デザイン」という言葉の根源は、人間が自身を取り巻く世界に対して痕跡を与え、意味を発生させる行為につながっています。
本展ではそのようなはたらきを、20世紀末以降の西洋的なグローバル・デザインの潮流に対する日本の応答のなかに観察します。
現代におけるグローバル化は単なる西洋化として説明できるものではなく、さまざまな地域文化の入り混じりや、異文化を翻訳して解釈するダイナミズムのうえに成り立っています。日本の携帯電話発祥の絵文字が「EMOJI」としてグローバルな通信システムに取り入れられたことは、その一例でしょう。
そのようなダイナミズムのなかで日本のデザインについて考える際、これまでのような「日本の伝統的な美意識」を持ち出すだけでは現代のリアリティに接続できません。
そこで注目したいのが文字とデザインの関係です。日本では漢字、ひらがな、カタカナを併用し、表現のモードに応じて併用する、独自の情報空間を発達させてきました。このような構造は、文字と図像が自在に融合するレイアウトにもつながっています。
文字を横組みで打つことが日常化した時代のなかで、グローバルな情報構造と日本の文字が散らす火花のなかにどのようなデザインの可能性が浮かんでいるのか。ぜひ会場でお確かめください。
室賀清徳
室賀清徳 Kiyonori Muroga (画 :北村みなみ)
編集者。グラフィック社所属。 1975年新潟県長岡市生まれ。グラフィックデザイン、タイポグラフィ、視覚文化についての書籍の企画編集、評論、教育を国際的に行う。『The Graphic Design Review』(JAGDA)編集長。前「アイデア」編集長。共著に『グラフィックデザイン・ブックガイド』ほか。東京藝術大学、武蔵野美術大学非常勤講師。
これまでに10を超えるグラフィックデザイン展の企画に関わってきましたが、そのたびにグラフィックデザインをテーマにして展覧会を成立させる難しさを痛感します。グラフィックデザインは私たちの生活のなかで機能するものであり、ホワイトキューブでの展示は自明のものではありません。ひとつ(あるいは限定された数)だけ存在する美術作品の展示とは異なり、複製を前提としたグラフィックデザインの作品展示は──一歩外にでれば手に取ってさわれるものを仰々しく扱うような──奇妙な空間を生み出すこともあります。
日常と展示空間の間にある境界線を跨いでもグラフィックデザインを躍動させる、そのために必要なのは新しい文脈に接続させること。「過去との参照関係(=引用/サンプリング)」や「つくられ方(=プロセス)」を展示するなどの方法がこれまでの成功例としてありますが、今回の展示ではポストデジタル時代に点在する視覚伝達の諸相をつなぎあわせることで、多くのデザインの歴史書がその記述を終える1980/90年代を起点とした、新たなグラフィックデザインの文脈をデザインすることを試みます。
中心に据えたのは「文字とイメージ」。これらが織りなすイリュージョンは、グラフィックデザインの根源的な働きだと言えます。現代のデザインに求められる合理性だけに矮小化されない、視覚伝達の大きな網でポストデジタル時代の表象を捉え、私たちの生活のなかに機能するさまざまなビジュアルコミュニケーションの点と点を結び、大きなグラフィックデザインの像を浮かび上がらせることで.グラフィックデザインの展示を成立させるにとどまらず──時代が変わってもグラフィックデザインが持ち続ける力について考える場をつくれたらと思います。
後藤哲也
後藤哲也 Tetsuya Goto
デザイナー/キュレーター/エディター。Out Of Office主宰。近畿大学文芸学部准教授/大阪芸術大学客員教授。J AGDA「The Graphic Design Review」編集委員。著書に『K-GRAPHIC INDEX』(グラフィック社)、『アイデア別冊Yellow Pages』(誠文堂新光社)がある。主な展覧会:Typojanchi(Culture Station284、2013&2015)、グラフィズム断章:もうひとつのデザイン史(クリエイションギャラリーG8、2018)、GRAPHIC WEST 7: YELLOW PAGES(京都dddギャラリー、 2018)、FIKRA GRAPHIC DESIGN BIENNIAL2018(シャルジャ、2018)、アイデンティティのキキ(A-Lab、2020)、GRAPHIC WEST 9: Sulki & Min(京都dddギャラリー、2021)、ニューアイデンティティ(A-Lab、2021)、ddd DATABASE1991-2022(京都dddギャラリー、2022)
https://outofoffice.jp/
今回の展覧会は主に1990年代以降のグラフィックデザインの事例を通して、現代のビジュアルコミュニケーションに着目します。90年代といえばグラフィックデザインの現場でDTPが一般的になってきた頃。さらにプログラミングでデザインを出力したり、インターネット上でのインタラクティブな表現も数多く出てきました。
その頃学生だったぼくは、デジタルメディアやインターネットの登場による新たな表現に心躍らせる一方で、当時すでにレジェンドだった60-80年代に活躍した名だたるグラフィックデザイナーたちにも憧れてもいました。
そのような流れのなかにあって通底しているのは、本展の大きなテーマでもある日本語的なビジュアルコミュニケーションにあると思います。当時のグラフィックデザイナーたちは例えばモダンデザインと向き合うなかで、現代の私たちはデジタルメディアに向き合うなかで、その想像力によって環境を更新してきたのではないでしょうか。
漢字、かな、カナ、alphabet。縦組、横組、ルビ表現……日本語の書字スタイルは世界に類を見ない複雑怪奇なものです。これを多くの人が当たり前に使いこなしているのは驚くべきことです。デザイナーとしてそれらの要素を手なずけ、コントロールするのは大変なことですが、その複雑さを豊かさととらえ、積極的に向き合えたらこれほど楽しい環境はありません。
展示を通して、このような日本語的ビジュアルコミュニケーションの豊かな世界を楽しんでいただけたら幸いです。
加藤賢策
加藤賢策 Kensaku Kato
グラフィックデザイナー/アートディレクター。株式会社ラボラトリーズ代表。グラフィックデザインの雑誌『アイデア』(誠文堂新光社)のアートディレクション、および「ファッションインジャパン1945-2020─流行と社会」(国立新美術館、2020)、「オラファー・エリアソン 時に川は橋となる」(東京都現代美術館、2020)、「エゴン・シーレ展」(東京都美術館、2023)、「マン・レイのオブジェ」(DIC 川村記念美術館、2023)、「六本木クロッシング 2022─往来オーライ!」(森美術館、2023)、「ブルーノ・ムナーリ ─役に立たない機械をつくった男」(神奈川県立近代美術館ほか、2018)、八戸市美術館のシンボルマークおよびサイン計画(2021)など、美術館や展覧会に関するグラフィックデザイン、エディトリアルデザインを多く手がける。企画構成『アイデア 370 特集:思想とデザイン』(誠文堂新光社、2015)、展示構成「グラフィズム断章:もうひとつのデザイン史」(クリエイションギャラリーG8、2018)など。武蔵野美術大学非常勤講師。
www. labor-atories.com
■展示内容
ギャラリー1:日本語デザインのパースペクティブ
漢字、仮名をはじめ複数の文字が多層的に組み合わさる日本語の書記体系はどのようにデザインされてきたのか。その歴史的展開を紹介するダイアグラムや、近代以降の文字を軸とするグラフィックデザイン作品を紹介します。
ギャラリー2:グローバル時代のオルタナティブ
文字とイメージを統合して発展してきた日本語のグラフィック文化が現代のグローバルな情報環境のなかでみせている動きを、海外の動向も交えた13のテーマ、約50組のクリエイターの実践を通じて紹介します。
1. テクノロジーとポエジー
2. 造形と感性
3. メディアとマテリアル
4. 言葉とイラストレーション
5. キャラクターと文字
6. 書物の構造と風景
7. デザイナーと言葉
8. ファッションとカルチャー
9. ヴァナキュラーとリージョナル
10. 文字と身体
11. グローバル性と固有性
12. パブリックとパーソナル
13. 言語を越えて
ギャラリー2展示デザイナー(五十音順)
明津設計、秋山 伸、アドビ、有馬トモユキ、石塚 俊、上西祐理、Experimental Jetset、M /M (paris)、大島依提亜、大原大次郎、岡﨑真理子、葛飾出身、上堀内浩平、川谷康久、菊地敦己、北川一成、小池アイ子、 佐々木 俊、佐藤可士和、佐藤 卓、John Warwicker (Tomato) 、白井敬尚、鈴木哲生、Sulki & Min、祖父江 慎+コズフィッシュ、大日本タイポ組合、立花ハジメ、立花文穂、The Designers Republic、投票ポスタープロジェクト、戸田ツトム、中島英樹、仲條正義、名久井直子、野田凪、Noritake、服部一成、原研哉、羽良多平吉、BALCOLONY、平林奈緒美、 廣田碧、松本弦人、三重野龍、水戸部功、みふねたかし、宮越里子、山田和寛、吉田勝信、米山菜津子、寄藤文平、王 志弘
【開催概要】
タイトル21_ 21 DESIGN SIGHT 企画展「もじ イメージ Graphic 展」
会期:2023年11月23日(木・祝)-2024年3月10日(日)
休館日:火曜日(12月26日は開館)、年末年始(12月27日-1月3日)
開館時間:10:00-19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般 1,400円、大学生800円、高校生 500円、中学生以下無料
会場:21_ 21 DESIGN SIGHTギャラリー 1& 2
〒 107-0052東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
Tel.:03-3475 -2121 https://www.2121designsight.jp/program/graphic/
アクセス:都営地下鉄大江戸線「六本木」駅、東京メトロ日比谷線「六本木」駅、東京メトロ千代田線「乃木坂」駅より徒歩 5分
主催:21_ 21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、経済産業省、港区教育委員会、公益社団法人日本グラフィックデザイン協会、東京タイプディレクターズクラブ、特定非営利活動法人日本タイポグラフィ協会
特別協賛:三井不動産株式会社
協賛:株式会社 TSDO
協力:公益財団法人 DNP文化振興財団
展覧会ディレクター:室賀清徳、後藤哲也、加藤賢策
グラフィックデザイン:LABORATORIES
会場構成:中原崇志
会場構成協力:吉田あさぎ
企画協力:西山 萌
*本展にあわせて、グラフィック社より書籍の発売を予定しています。
21_21 DESIGN SIGHT
東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
TEL: 03-3475-2121
http://www.2121designsight.jp/
(文:21_21 DESIGN SIGHT / 更新日:2023.11.11)