一流デザインを具現化するための、確かな技術力〜マルニ木工〜
これまで招聘デザイナーとして関わってきた深澤直人氏を、今年からアートディレクターとして迎えた「マルニ木工」。今年のミラノサローネでは、2008年から発表している深澤直人デザインの「HIROSHIMA」シリーズに加え、2011年の新シリーズ・深澤氏による「roundish(ラウンディッシュ)」と、Jasper Morrison(ジャスパー・モリスン)氏の「Lightwood」を展示発表していました。
「roundish」とは、英語で「丸みがかった、やや丸い」の意味。背もたれから座面にかけて、「完全な円」にはない「丸み」のシェイプを際立たせながら、無駄をそぎ落としたデザインの美しさと、木の自然な風合いが活かされたチェアは、どの角度から見ても、木の持つ優しさと凛とした表情を感じさせます。
「Lightwood」シリーズのチェアは、重さ約2.5kg。ジャスパー氏の「軽さ」のデザインを表現しながらも、椅子としての確かな実用性を実現させています。脚を支える貫(ぬき・椅子の脚をつなぎ補強する部材)は、デザインとしての美しさを保ちつつ位置をずらし、脚の強度を上げるポジションへ。また結合部分の枘(ほぞ)と枘穴に複雑な加工を施すことで、接着面を広げ、さらに強度を高めています。この作品の裏側には、マルニ木工の精緻な技術が各所に施されていました。
ミラノサローネでのフィエラ会場とフォーリ会場の同社のブースでは、世界各国の人たちが絶え間なく訪れ、既発の「HIROSHIMA」も含めた各シリーズを熱心に見入っていました。「日本の木の家具は、エレガントで優しい。デザインのシンプルさも活きていて、特にマテリアルが美しい」と海外からの評価も。
木の生活文化を持つ日本において80年以上の歴史を持ち、木を知り尽くした同社だからこそ可能にした、ナチュラルでミニマムなデザインのテーブルとチェア。世界トップクラスのデザイナーが要求するイメージを、完璧なまでに具現化させた技術力に、世界が注目しています。
(文:KEIKO YANO (矢野 恵子) / 更新日:2011.05.04)