【インタビュー】
次世代クリエーターたちの挑戦 荻原実紀さん
現代はもう、「つくれば、売れる」時代ではありません。
情報通信分野が飛躍的に進歩する中で工業化社会は終焉し、ものづくり日本は行き先を見失っています。
一方、デザインは人々を幸せにし喜びをもたらす大きな力を持っています。ビジネス発展のエネルギー源やイメージの競争力にもなりうる力を秘めています。
感受性豊かな子供のころ、「失われた20年」の中で育ち、アナログとデジタルとの間に生まれた「半デジタル」世代。日本が経済大国となる20世紀を創り上げてきた大人たちと、これから21世紀を生きていく人達の、両世代の橋渡しをするであろうこの時代の中で育った若者たちの新しい価値観に焦点をあて、ものづくり日本の未来を担う『次世代のクリエーターたちの挑戦』をご紹介していきます。
彼らの生き方をご紹介することで、ものづくり現場の未来へのヒントになれば幸いです。
中西元男氏との出会い、そしてPAOS時代
今回ご紹介する荻原実紀さんは『株式会社コトヴィア』と『株式会社そらゆい』の2つの会社の代表を務めています。
愛媛県宇和島市出身。海と山の自然に囲まれた歴史ある城下町で育ち、豊かな感性を育んできました。学生時代、いつしか地方や中小企業をサポートできる経営知識を身につけたいと思うようになり、立命館大学院経営学研究科に進学しました。当時客員教授であった中西元男氏の講義を受け、PAOS独自の考え方や手法に衝撃を受け、「経営に変革を起こすデザインの影響力」に感銘を受けたのです。この大学院時代の中西氏との出会いで、インターンシップを通じて、株式会社中西元男事務所《PAOS》に入社します。
PAOSとは、アジア、日本でのCI(コーポレート・アイデンティティ)の創始者であり、第一人者である中西元男氏を中心に、企業経営とデザインの融合を理論化し、これまで45年余100社以上のCI戦略を手掛け、多くの成功事例を世に送り出してきた企業です。
2003年にPAOSに入社。代表の中西元男氏のもとで直接的に指導を受け、一流のプロフェッショナルな仕事を追求する現場は大変に厳しかったそうです。PAOSプランナーとして従事した7年間は、たくさんのクライアントや人脈に恵まれ、多くの貴重な経験とPAOS流のメソッドやノウハウを習得しながら、企業経営におけるデザインを研究・実践しました。
感性デザインコンサルティングファームCOTOVIAを創業
荻原さんは入社当初から自主自立するために育て鍛えられ、いつかはPAOSの理念やメソッド、中西氏のイズムを継承し自立しなければならない時期が来ると意識していました。中西氏が主宰するニュービジネススクール「STRAMD(戦略経営デザイン人材育成)」が本格化していく中で、PAOSでの経験を活かしながら、新しい時代にふさわしい価値やサービスを提供する事業が、次の世代を引き継ぐ私たちにできないだろうかと模索しはじめます。
2010年4月、荻原さんは、中西氏の応援もありPAOSから独立し、PAOSで同僚であった、田中裕子さん(現チーフシニアデザイナー)、リチャーズ智恵子さん(現シニアデザイナー・マネージャー)と女性3名で、COTOVIA(株式会社コトヴィア)を創業しました。
COTOVIAは、ポルトガル語で「ひばり(雲雀)」という意味です。「ひばり」が飛翔し、あたたかな春を告げるごとく、感動価値を創出することで、お客さまの「新たな誕生」や「再生」「上昇」を支える存在でありたいと、この名称で出発しました。
経営者や暮らす人々の「願い」「想い」「価値観」の可視化、ビジュアル化、シンボル化を得意とするCOTOVIA(株式会社コトヴィア)は、企業や組織のビジョンや経営課題を、感性訴求力を活かしてデザイン戦略を軸に解決し、共に「未来」を創造する「感性デザインコンサルティングファーム」として、クリエイティブ事業を展開していきます。
(文:KEIKO YANO (矢野 恵子) / 更新日:2014.11.02)