Photo by Yosuke Owashi
【インタビュー】
次世代クリエーターたちの挑戦 小林幹也さん
現代はもう、「つくれば、売れる」時代ではありません。
情報通信分野が飛躍的に進歩する中で工業化社会は終焉し、ものづくり日本は行き先を見失っています。
一方、デザインは人々を幸せにし喜びをもたらす大きな力を持っています。ビジネス発展のエネルギー源やイメージの競争力にもなりうる力を秘めています。
感受性豊かな子供のころ、「失われた20年」の中で育ち、アナログとデジタルとの間に生まれた「半デジタル」世代。日本が経済大国となる20世紀を創り上げてきた大人たちと、これから21世紀を生きていく人達の、両世代の橋渡しをするであろうこの時代の中で育った若者たちの新しい価値観に焦点をあて、ものづくり日本の未来を担う『次世代のクリエーターたちの挑戦』をご紹介していきます。
彼らの生き方をご紹介することで、ものづくり現場の未来へのヒントになれば幸いです。
たくさんの出会い
みなさんはこの『UKI HASHI ウキハシ』という商品をご存知でしょうか?この商品は毎日の生活の中でふとしたときの気づきの中で生まれた商品です。箸置きがいらない箸『UKI HASHI ウキハシ』は世界中で売れ続けている大ヒット商品です。
Photo by Yosuke Owashi
小林幹也氏
志村美治氏
名児耶秀美氏
桐山登士樹氏
これをデザインした小林幹也さんは現在33歳。『UKI HASHI ウキハシ』は24歳のときの作品です。株式会社小林幹也スタジオの代表で暮らしをテーマにしたインテリアショップ『タイヨウのした』のオーナーでもあります。
2005年3月に武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科インテリアデザインコースを卒業した小林幹也さんは、株式会社フィールドフォー・デザインオフィスに1年間勤めます。ここではたくさんのプロジェクトに関わり、仕事の進め方から空間設計までをしっかり学びました。
大学時代からすでにいくつかの賞を受賞している小林さんの才能を認めていた当時の上司で現在は代表取締役である志村美治氏に、「海外では日本にはない経験を得られる」と言われた小林さんは、1年後海外勤務も視野に入れてそこを退職します。
株式会社フィールドフォーとは退職後も仕事でお世話になり、小林さんが日本のデザイナーで一番尊敬する人という志村美治氏とは、いまでも良い関係を続けています。
2006年退職して24歳で独立。同時に事務所設立。前々から温めてきた『UKI HASHI ウキハシ』の提案書をアッシュコンセプト株式会社代表取締役の名児耶秀美氏に見せます。アッシュコンセプト株式会社とは日本を元気する商品づくりをコンセプトに若手デザイナーを多く発掘する会社です。そんな名児耶秀美氏にこれは商品化できると言われました。自身の作品が商品化された第1号です。
デザイン業界と言えば、名のある企業やアトリエで数年修行を重ねて独立。というのか大半の人のデビューです。1年勤めたとはいえ大学卒業したての若さでそのあともいろいろな賞の受賞を重ねていく小林さん。彼にとってフリーランスで仕事をすることは自然の流れでした。
そのころは一生懸命勉強をしました。お声をかけてくださる方のおっしゃることは素直に耳を傾け、事務所を開設したのもそのアドバイスからです。みなさんが事務所は絶対もったほうがいいと言われました。
早く事務所を開設したおかげで対外的に真剣さが伝わり、そのあとも小林さんのまわりには、彼を助ける守護神たちが次々と現れます。
デザインマーケティング、ブランドプロデュース、建築デザイン展のキュレーションおよび運営を行う株式会社TRUNK 代表であり、デザインディレクター桐山登士樹氏の出会いも大きな出会いでした。
桐山登士樹さんにはいろいろなプロジェクト参加にお声をかけていただきました。
TATE OTAMA 富山プロダクトデザインコンペティション2008 にてグランプリ受賞 Photo by Yosuke Owashi
このように小林さんを応援する名だたる業界の方々は、日本の未来に続く「ものづくり」を、彼だったらやってくれるだろうと信じて、大事なプロジェクトのデザインをゆだねるのです。
そのあとも、日本の暮らしに溶け込む美しいデザインが次から次に誕生します。
(文:KEIKO YANO (矢野 恵子) / 更新日:2014.10.12)