神奈川県立図書館の新しい本館オープン これまでの本館は「前川國男館」に新しい本館がオープン


photographer: DAISUKE SHIMA

 

 

神奈川県指定重要文化財に指定の
これまでの本館は「前川國男館」に

神奈川県立図書館の新しい本館がオープン
 

 

 

2022年9月1日(木)、神奈川県横浜市西区に、神奈川県立図書館の新しい本館が開館しました。


紅葉ケ丘地域の学びの中核を担う図書館として再出発する神奈川県立図書館は、建築、ロゴマーク・サイン計画、家具計画・編集、家具デザインにおいて、1954年開館の神奈川県立図書館(現 前川國男館)への敬意を払い、同時に、新しい図書館のあり方を熟考して場所づくりに取り組みました。

特設サイト
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/yokohama/teasersite/

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いつだって世の中は変容し、更新され続けています。そして、本というメディアの果たす役割も同様にかわってきています。神奈川県立図書館は、時代を超え集めてきた資料によって過去と現在を結び、未来を映したいと願っています。そして、読書行為によって生み出すことができる「価値の創造」について考えていきます。本に親しむだけでなく、読みを深め、自発的な探求を促し、誰かとの交流を支える。考え続ける人に寄り添うことが、この場所の役割です。

-引用:神奈川県立図書館特設サイト-
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《建築意匠設計:石井 秀明(奥野設計) 

外観


日射を制御しながら自然光を室内に採り入れるための機能を継承した有孔木パネルの外観
 

1F エントランス

ラウンジチェアの閲覧スペースからエントランスをみる
 


ラウンジチェアの閲覧スペースからギャラリーをみる

 

1F 閲覧席

 

1F リフレッシュエリア


吹き抜けのリフレッシュエリア

飲食ができて休憩に使えるスペース

 

1F-2F 吹き抜け

 

2F リフレッシュエリア ⇒ 閲覧スペース


ネイビーの椅子までが飲食ができるリフレッシュエリア


ナチュラルな椅子は閲覧スペース
 


有孔木パネルによって、穏やかな自然光を室内に採り入れることができる閲覧スペース


静寂読書室 読書に集中でパソコン、書き物は不可

 

3F 

3F ザ・リーディングラウンジ


ザ・リーディングラウンジ 

オープンテラス

photographer: DAISUKE SHIMA

建築について
前川國男氏の設計による紅葉ケ丘地域の建築群は、大らかでありながらも凛とした佇まい、素晴らしいプロポーションとスケール感を持つ、前川建築の代表作です。1954年開館の県立図書館は、日射を制御しながら自然光を室内に採り入れるための装置であるホローブリック(有孔煉瓦ブロック)、プレキャストコンクリートルーバーが外観を特徴づけています。隣接する県立音楽堂のホワイエは、外部のピロティと一体となって、大きなガラススクリーン越しに集う人の表情が見え、透明感と開放感あふれる、開かれた建物となっています。 新しい本館は、これらのエッセンスを抽出し、前川建築との連続性を意識しながら設計しました。紅葉坂側のガラススクリーンには、直射日光を防ぎつつ空間に開放感をもたらすホローブリックの機能を参照した有孔木パネルを配置しました。柔らかい自然光が閲覧スペースに差し込む中で、本と光に包まれながら本と向き合うことのできる、心地よい空間を目指しました。また、青少年センター側のガラススクリーンは図書館内の様子が見えるように透明感と開放感があるものとしています。新しい本館が「価値を創造する図書館」として、多様な活動を支え、開かれた図書館として親しまれることを願います。
石井 秀明 / 奥野設計

<石井秀明 プロフィール>
2004年日本大学理工学部建築学科卒業
2006年日本大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了
2006年~湯澤建築設計研究所、2010年~奥野設計
2018年9月神奈川県立図書館新棟新築工事調査設計業務プロポーザルにて選定され神奈川県立図書館プロジェクトに携わる。
神奈川県立図書館の他に、公共建築「横浜市立箕輪小学校」、福祉施設、集合住宅などの意匠設計を担当する。


 

 《ロゴマーク:木野 彰悟/ 6D》

ロゴマークついて
神奈川県立図書館が持つ重厚で伝統のあるイメージを大切に、前川國男建築の特徴的なアイコンであるホローブリック(穴あきレンガ)をモチーフに表現しました。専門性・広域性を持つ県立の図書館だからこそ、個性的過ぎず、しかし、価値を創造し、人を惹きつける新しい図書館像を表すことも意識しました。ロゴの形を見た時に、それが「知」を集積し、育む場である「神奈川県立図書館」を連想させるデザインとしています。
木住野 彰悟 / 6D

<木住野彰悟 プロフィール>
アートディレクター、グラフィックデザイナー。1975年東京都立川市出身。2007年にグラフィックデザイン事務所6D設立。
企業や商品のビジュアルアイデンティティをメインに、ロゴやパッケージデザイン、空間における サインデザインなど幅広
く手掛ける。主な受賞にD&AD、カンヌ、One Show、アジアデザイン賞、ADC賞、JAGDA賞、パッケージデザイン賞、サイ
ンデザイン賞 他国内外多数。

 

 

《家具計画・編集:松澤剛(E&Y)

家具計画について
カウンターなどの基本的な造作家具は建築・内装の意匠、司書の方々が考える「用途」と「来館者目線」に解答しながら、誠実さを大事に計画しています。そしてメインとなる閲覧席やラウンジの家具は、機能はもちろん、意匠として重要な位置付けになるため、デザイナーを起用してオリジナルで製作しています。今回の計画では中坊壮介氏と二俣公一氏にデザインの依頼をしており、この神奈川県立図書館の歴史や経緯についての対話、司書の方々とのヒアリングを経て、デザイン検討を行っていただきました。中坊氏に閲覧ビッグテーブル&チェア・スツール、そして屋外用家具、二俣氏にラウンジチェアとローテーブルを手がけていただいています。

70年ほど前に前川國男が手がけた神奈川県立図書館(現前川國男館)には、その建築の為にデザインされた水之江忠臣デザインの天童木工製の椅子が今年4月に休館するまで並んでいました。それは本当に特別なことであって、その事実が今回の編集に大きく作用しています。今回、E&Yがひとつひとつの家具の編集をおこない、製作しましたが、一部の家具に対して天童木工へ協働を依頼しています。それは単純なコラボレーションということではなく、天童木工の歴史と素晴らしい仕事への敬意はもちろん、70年前の言語と同じ韻を踏むことを判断した結果で、必然のような部分があります。同時に日本の県立図書館という場において海外のデザイナーが手がけた既製椅子などを並べるといったプロダクトへの偏重、スタイリングとしてセレクトされた家具にはするべきではないという意図も含まれています。そして、なにより日本人のデザイナーに手がけて欲しいという想いと、公共の場であるからこそ、永く愛される家具であって欲しいと思っています。
松澤 剛 / E&Y

<松澤 剛 プロフィール>
デザインエディター 株式会社E&Y代表取締役。ファニチャーやプロダクトを軸とした国内外のデザイナーの作品をプロデュースし、現コレクションは50点以上になる。2006年にZANOTTAとのコラボレーティブエディションをミラノで発表し、2010年には新たなコレクションライン「editionHORIZONTAL」を東京・ロンドンにて発表した。作品の一部は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、デザイン・ミュージアム(ロンドン)、パリ装飾芸術美術館、スウェーデン国立美術館などに収蔵されている。また、国内外の建築家やインテリアデザイナーとのプロジェクトや展覧会の企画や編集、イベントのディレクターも務める。大阪芸術大学准教授。


 

《家具デザイン:中坊壮介(Sosuke Nakabo Design Office)


photographer: DAISUKE SHIMA

中坊壮介が手がけたデザイン
・閲覧椅子・スレッジベース・閲覧テーブル・スツール・荷置き台について
前川國男、水之江忠臣、天童木工の仕事は、長く愛される神奈川県立図書館のアイデンティティの形成に大きく関わっています。その歴史を受け継ぎ、新しい時代に繋げることをE&Yと共に目指しました。椅子は快適であっても眠くなるようなものでは無く、テーブルはしっかり頑丈でありながら人に優しくあって欲しい。重厚すぎず軽やかすぎず。本を読むための椅子とテーブルについて、そんな風に考えました。二次曲面の成型合板と丸脚、それらを丈夫な構造で設計しています。シェルと脚で組み合わされる椅子、必要なだけ連結できるテーブル、スツール、荷置き台は、合理性を高めた一連の家具です。知が集まる尊い場にふさわしい、これからの図書館の風景を作るものになるよう願っています。

・テラスのスツール、テーブル について
新しい時代の図書館は様々な読書の形を提供します。過ごしやすい季節に、屋外のテラスでリラックスして本を読む。勉強の合間に少しだけ外の空気を吸う。そんな使い方のできるスツールと小さなテーブルをデザインしました。
中坊壮介 / Sosuke Nakabo Design Office

<中坊 壮介 プロフィール>
1998年京都市立芸術大学プロダクト・デザイン専攻卒業。 松下冷機デザインセンター勤務後渡英、2002年英国 Royal
College of Artのデザイン・プロダクト科修士課程修了。良品計画企画デザイン室、ジャスパー・モリソンのロンドンオフ
ィス勤務を経て、2010年Sosuke Nakabo Design Office設立。良品計画企画デザイン室長。

 

 

《家具デザイン:二俣公一(KOICHI FUTATSUMATA STUDIO)

ラウンジチェア・ローテーブル

ALL PHOTO photographer: DAISUKE SHIMA

 

二俣 公一が手がけたデザイン
・ラウンジチェア・ローテーブル について
図書館に来て、ゆっくりと本を読む。その行為そのものをラウンジチェアとして表現したいと思いました。そして、リラックスして本を読む際に最も近い距離にある家具だからこそ、その存在自体にリラックスした空気感を感じられるものにしたい。通常のラウンジチェアのように4本足で踏んばっているよりは、もう少しおおらかさがあったほうが良いと感じ、センターから背面に伸びる1本の後ろ足は、そのような考えから生まれています。また、部材は全て幅100mmの無垢材で構成しています。公共の図書館という環境を考慮して経年にも耐えうる強度を意識しつつ、複雑な要素をそぎ落とし、同材のみで構成した時のシンプルなフォルムに、座る人を受け止める強さのようなものも込めています。一緒に使用するサイドテーブルやローテーブルも、同じ幅100mmの部材で構成しました。この図書館で本を読むことの延長上に、このラウンジチェアに座ることが記憶に残るような、一つのアイコニックな存在になることを願っています。
二俣公一 / KOICHI FUTATSUMATA STUDIO

<二俣 公一 プロフィール>
空間・プロダクトデザイナー 福岡と東京を拠点に、空間デザインを軸とする「ケース・リアル」とプロダクトデザインに特化する「KOICHI FUTATSUMATASTUDIO」を主宰。国内外でインテリア・建築・家具・プロダクトと多岐に渡るデザインを手がける。主なプロダクト作品に、E&Yの「GO(スツール)」や「4FB(コートハンガー)」、天童木工の80周年記念プロジェクトとしてデザインされた「SAND(チェア)」など。また「22(真空管アンプ)」は、サンフランシスコ近代美術館の永久所蔵品となっているほか、Artekから「キウルベンチ」、valerie_objectsからカトラリーをリリースするなど国内外の様々なブランドと協働している。主な空間デザインには、和菓子店「鈴懸」や「アーツ&サイエンス福岡店」、香川県・豊島にある「海のレストラン」のほか、「DDD HOTEL」、スキンケアブラン ド「イソップ」との恊働などがある。受賞歴にアジアデザイン賞、JCDデザイン賞、FRAMEアワード、D&AD 賞など多数。2021年からは、神戸芸術工科大学で客員教授を務める。


 

《図書館の王道2.0》

公共図書館といえば「無料で本が借りられる場所」と認識している方も多いかもしれませんが、全世界的に「教育」と「コミュニティ」の場所として生まれ変わってきています。図書館の内と外の境界を曖昧にして、なるべく多くの方に来館いただき、知らない本を手に取る機会を増やす。その考え方は、リアルな本の場所としてより広がっていくと思われます。

一方で、今回のプロジェクトの舞台である県立図書館は(他の市区町村の図書館と比べ)、今まで蓄積させてきた多くのアーカイヴズを守り継いでいく使命も果たさなければなりません。図書館を「ひらく」ことで来館者を増やしてゆくだけでなく、「しっかりと本と向き合い、それを読み生かす」という読書の本義に新しい視点を差し込みながら、未来の図書館の王道をしっかりと体現することが、ここ神奈川県立図書館のプロジェクトでは大切でした。

時間の奪いあいが日々激しくなる中、没入に時を要する本は届きにくいものになってきています。そんな状況下で、サイン計画や家具計画を中心に多くの専門家に関わっていただきながら、丁寧な本の差し出し方を心掛けました。また、それは本と向き合う時間、居心地をどうつくるのか? という模索ともつながります。床材の選択や、椅子の座面の高さ、その素材、そのプロポーションの一つ一つが、読書に深く潜るための探求の成果だといえます。それらの意図や作為が読み手には気づかないくらいのさり気なさで、自然とこの場所に滑り込ませることができていたらと思います。「なんだか居心地がよくて、気がつけば読んでいた」。そんな環境をつくるため、関わってくれた多くのプロフェッショナルの細部を見る目に感謝したいと思っています。
幅允孝 / 神奈川県教育委員会顧問・BACH

<幅允孝 プロフィール>
有限会社BACH(バッハ)代表。ブックディレクター 人と本の距離を縮めるため、公共図書館や病院、学校、ホテル、オフィスなど様々な場所でライブラリーの制作をしている。安藤忠雄氏が設計・建築し、市に寄贈したこどものための図書文化施設「こども本の森 中之島」では、クリエイティブ・ディレクションを担当。最近の仕事として「早稲田大学 国際文学館(村上春樹ライブラリー)」での選書・配架、札幌市図書・情報館の立ち上げや、ロンドン・サンパウロ・ロサンゼルスのJAPAN HOUSEなど。神奈川県教育委員会顧問。

 


クリエイター一覧
[建築意匠設計]石井秀明(奥野設計)
[ロゴマーク・サイン計画]木住野彰悟(6D)
[家具計画・編集]松澤剛(E&Y)
[家具デザイン] 中坊壮介(Sosuke Nakabo Design Office)
                       二俣公一(KOICHI FUTATSUMATA STUDIO)
[マニファクチャー] E&Y Co.,ltd
                           株式会社天童木工
[監修]幅允孝(神奈川県教育委員会顧問/BACH)

本館の特設サイト
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/yokohama/teasersite/


 

【施設概要】
神奈川県立図書館 本館 
住所: 横浜市西区紅葉ケ丘44 ⇒ map

開館日時はこちらから ⇒ カレンダー

神奈川県立図書館HP
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/


アクセス
神奈川県立図書館 本館 〒220-0044 横浜市西区紅葉ケ丘44
[ 電車でお越しの方 ]
JR、市営地下鉄 桜木町駅より徒歩10分
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みなとみらい線 みなとみらい駅より徒歩20分
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横浜市営バス103系統(横浜駅東口始発) [戸部1丁目] 下車 徒歩5分

(文:制作 PR-K_PR制作部-5  /  更新日:2022.12.19)

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