東京ビッグサイトで開催された「JAPAN SHOP 2011」内の「建築・建材 2011」で目を引いたのが、「セラミックタイル美濃」の展示会ブースです。
会場中心に「美濃カフェ」を作り、コーヒーを振舞っていたこのブースは、地方産地のメーカー16社が集結し出展した笠原町美濃焼振興協議会です。
2008年のリーマンショック以降、大きく落ち込んでいた首都圏の建築・建設業界は、わずかに回復傾向にあるといわれていますが、地方における状況は依然深刻です。そんな中での、今回の出展。元気がないと言われる地方の地場産業ですが、現況はどのようなものでしょうか?また、これからの取り組みやインテリア業界への提案などについて、「セラミックタイル美濃」を主催する笠原町美濃焼振興協議会の事務局理事長・水野さんにお話を伺いました。
岐阜県多治見市笠原町は、タイルの日本における一大産地。全国に先駆けてモザイクタイルを誕生させ、現在でも国内シェアの40 ~ 50%を占めています。笠原町美濃焼振興協議会は、原料会社を含むタイルメーカーをメインとして、笠原町を所在とする数十社の企業で構成する団体です。「笠原町は、タイルの原点です」と言い切る、水野さん。同町に本社を置く名古屋モザイク工業や、国内最大手INAXも協力工場も持つなど、まさに“タイルのふるさと”とも言えます。
笠原産のタイルについて「笠原町は、1300年の歴史を持つ美濃焼の町でもあり、その技術を受け継いだ笠原のタイルメーカーは、色付け・釉薬・焼きにおいて高い技術を持っています。たしかに、イタリアのデザインタイルはすばらしいと思いますが、吸水率が高く割れやすいという性質もあります。その点、笠原町のタイルは磁器タイルですから、吸水率は0.2%と低く割れにくいので、多湿な日本の風土に合ったタイルです」。産地商社が存在し、タイル生産で分業化が機能する地でもあります。
伝統を守るだけではなく、“ライバル”イタリアから機械を輸入し、新しい技術を導入したものづくりも。
表面プリントを施したタイルには、精緻な表現力が見られます
近年の建築業界の落ち込みに伴って、タイルの需要も減少する一方。加えて「タイルは目地が汚れやすい、と敬遠される傾向で」と、水野さん。「現在はクリーン目地という汚れにくい素材もありますが、それ以前に目地なんか気にせず『このタイルがいい!』と気に入られる製品を開発できていないという反省があります」。お手入れの簡便さから、バスルームやキッチンの壁はパネルが主流の現在。でも、「バスルームやキッチンなどに限らず、実はタイルはいろんな所に使えるんです。水周りだけでなく、これからはリビングなどのインテリアにも大いに活用してもらいたいと思っています」と言われるとおり、展示会場では様々なタイルのプレゼンテーションがありました。
「キレイに心地よく暮らしたい」とは誰もが思うことですが、日々のお手入れの簡単さだけを優先するのは、すこしだけ暮らしの面白みに欠けると思いませんか?「目地があってこそタイル」と愛着の湧くタイルの開発に期待したいと思います。
「笠原町は小さな地域ですが、日本を代表するタイル産地として、日本のみなさんに知ってもらいたい」という思いでPRを続ける、同協議会。昭和50年代後半から東京でのPR活動を始め、「JAPAN SHOP」への参加は十数年になります。
個の存在が集まれば大きな力になる笠原の展示会場は、設計・デザイナーさんを含め、多くの来場者を集めていました。
(文:インテリア情報サイト編集部-1 / 更新日:2011.04.02)