全室フローリングのマンションで育った子どもが、知人宅の和室で初めて畳に触れた時に、寝転がって「気持ちいい」とよろこんだ、という話を聞いたことがあります。私たち日本人のDNAに、畳の心地よさが組み込まれているのでしょうか。
フローリングのライフスタイルが定着してはいますが、畳の上の生活も、そう簡単には捨てられません。
髙田織物株式会社は、そんな畳の縁(ふち)を製作する専門メーカー。
会社のある岡山県倉敷市児島は、畳縁の生産シェア約80%を誇るという、こちらも“畳縁のふるさと”です。同社の展示ブースを訪れてまず驚いたのが、その商品の多彩さ。いわゆる畳のイメージは、よくある緑色一色の畳縁ですが、紹介されていた畳縁は、無地・織り柄ともにとてもカラフルで美しいものでした。
最近の建て売り住宅や分譲マンションなどの和室には、縁なし畳が使われていることが多いですが、同ブースでは縁なし畳にはない畳縁の「機能性」も紹介されていました。
畳の表面角の摩耗を防ぎ、隙間を埋めて衛生的、そして畳の裏側を利用すること(裏返し)ができ経済的と、畳縁は日本らしい合理性を兼ね備えた装飾だと知ることができました。
また、アーガイルや迷彩柄、レオパードにヒョウ柄と、地味な畳のイメージを覆す“イマドキ”の織り柄も、積極的に製作する?田織物。さらに、畳縁だけにとどまらず、その織り技術を活かしベルトや小銭入れ、カードケースも製作するなど、同社の新しい取り組みも注目すべき点の一つです。
ほんの小さな面積ながら、和室空間の雰囲気を仕上げる重要な役割を担う畳縁。
こだわって個性的な和空間を創り上げたり、取り替えてこれまでのイメージをガラリと変えてみたり。日本の暮らしにとって機能性が高く、小さな装飾として日本らしい粋な空間演出を施す、畳縁という名脇役の仕事ぶりに感心するばかりでした。
(文:インテリア情報サイト編集部-1 / 更新日:2011.04.02)