イタリア生まれの日本育ち「アルフレックスジャパン」の創立
株式会社ヴァンヂャケット(VAN Jacket inc.)の社員だった保科正氏は、1967年に会社を退社して単身渡伊。
ヴァンヂャケット(VAN Jacket inc.)とは、1960年代に一世を風靡した、日本のアパレル企業です。創業者の石津 謙介氏はファッションのみならず、音楽、ライフスタイル、思想に至るまで、日本の戦後文化に大きな影響を残した人物です。ブレザーとボタンダウンシャツをベースとしたニュー・イングランド風学生ファッションスタイルを「アイビールック」として紹介し、若者のファッション文化に改革をもたらしました。当時それを着て銀座の「みゆき通り」を闊歩する若者を「みゆき族」と称してファッションの流行を作り出しました。
確かにファッションは面白いけれど、当時の若者はお金をかけておしゃれな服を着ていても住まいや生活はまだ豊かとはいえないものだった。それで若者が競っておしゃれをするのに違和感を覚えた。それに人々の幸せは暮らしが豊かでないと本当の幸せでないと保科正氏は思ったそうです。
仕事で世界中を回るうちに、過去の遺産は大切にする反面、変えられるところでより美しいものを創造するイタリアの生活を目の当たりにします。イタリア人の生活気質に触れて、一日一日を楽しく豊かに生きようとする生活にあこがれを抱き、ライフスタイルに関わる仕事をしたいと考えるようになりました。そのことを退社理由として石津氏に伝えます。石津氏から「考えはわかった、それなら精一杯がんばってこい」と背中を後押しされました。イタリアに行く前は漠然とファッションではなくライフスタイルに関わる仕事をしたいと考えていた保科正氏が、そこで出会ったのが家具作りだったのです。
約3年間イタリアで修行を積んだ保科正氏は、極東地域での販売権とオリジナルデザインの製造権を持って日本に帰国後、アルフレックスジャパンをヴァンヂャケット(VAN Jacket inc.)の出資で四谷に創設しました。同時に青山に初めての直営店をスタートさせます。
(文:KEIKO YANO (矢野 恵子) / 更新日:2014.03.23)