1969年青山に直営店をオープンさせたアルフレックスジャパンは、1971年には日本オリジナル製品の開発に乗り出します。3年間のイタリア修行で、ソファを作る技術だけでなくイタリアモダンの感性も大きく培われました。その年、保科正氏のデザインしたソファ「レインボー」が爆発的ヒットとなり、素材の供給が間に合わなくなるほどでした。
着たり・脱いだり・洗ったり
また同年には「着たり・脱いだり・洗ったり」というキャッチコピーのソファ「マレンコ」も誕生します。これも大ヒット。「マレンコ」は、デザイナーのマリオ・マレンコが一瞬のうちに描いたスケッチから生まれたという、大胆かつ無駄のないシルエットが印象的で座布団をいくつも重ねたような、たっぷりしたボリュームがあるクッションのソファです。これにアルフレックスジャパンが独自のアイデアをプラスした「着たり・脱いだり・洗ったり」のカバーリングシステムは、後にイタリアに逆輸出されるまでになりました。
当時の顧客には、芸能界・スポーツ界をはじめ多くの著名人が名を連ねました。
しかし、1、2点のヒット商品があっても、そのころのアルフレックスジャパンの売り上げは安定したものではなかったのです。1970年代当時は、まだ日本にはイタリアモダンが定着しておらず、それどころか輸入の家具すら定着していなかった時代。国内家具が主流で洋家具があってもほとんどがクラシック家具。ましてや、モダンでクッション性のあるソファはハリウッド映画やTVのアメリカホームドラマの世界でしか見ることはできなかった時代です。
この期間は、イタリアで学んだ手法によりつくりあげる家具を日本の家庭へ浸透させて行きたい、という強い思いが保科正氏を支えていました。
本格的に売り上げが上がるのはそれからさらに10年先になります。
(文:KEIKO YANO (矢野 恵子) / 更新日:2014.03.23)