【インタビュー】 世界に挑戦し続ける日本企業 Vol.4 「ACTUS」

「インターネット元年」といわれた1995年にウィンドウズ95が発表され、インターネット関連企業の実需投資や株式投資のITバブルもあって、実は日本のGDPはバブル経済崩壊後も1997年ぐらいまで伸びています。

一方インテリアでは、1990年代から2000年代初頭までミッドセンチュリー5ブームというのがありました。バブル経済期で豊かさを一度知った人々は、インテリアにラグジュアリーさを求めていきました。

そこから日本は本格的なインテリアのブームへと繋がります。

そのブームに乗って東京の目黒通りに「家具通り」とよばれるほどの家具やインテリアショップが集まって、その後、カフェブームにつながり、裏原宿などの原宿若者文化とともにインテリアが再加熱します。そのころの青山や原宿にあるおしゃれなカフェには必ずと言っていいほどミッドセンチュリー時代の偉大な建築家、デザイナーであるイームズ夫妻やジョージ・ネルソン、エーロ・サーリネンなどがデザインした家具が置いてありました。ストリートブランドを好む人々のインテリアの嗜好がミッドセンチュリーだったのです。

活動の軌跡が映画にもなったイームズ夫妻

 

 

5インテリア業界でミッドセンチュリーとは、1940~1960年代にデザインされた家具や雑貨、建築物を表す言葉として使用。ミッドセンチュリーモダンは、インテリア、製品、グラフィックデザイン、建築、都市開発におけるアメリカのデザインムーブメントであり、米国の第二次世界大戦後の1945年から1969年頃に人気があった。



また、ITバブルでIT長者となった若手ネット系・IT系ベンチャー起業家たちは、Tシャツにジーンズとラフな服装でも、オフィスにはエルゴノミクス(人間工学)的で流線に描かれたワーキングチェア&キャビネット、会議室は洗練されたミーティング用の大テーブル、役員室はイタリアブランドのソファを揃えて、サクセスストーリーを駆け上がりました。

 

ライフスタイル型インテリアショップの乱立

2006年にはIKEAがイケア・ジャパンとして再上陸。より迅速な在庫管理を行うために中国上海に大規模物流センターを建設、日本での店舗は土地・建物をすべて自社物件にする完璧な準備のため予定より1年延ばしたオープンです。それにより日本では北欧インテリアも再加熱します。

地方でもたくさんのライフスタイルショップができました。インテリア・デザイン小物を一緒に置いているアパレルショップもありました。まさしくライフスタイル型インテリアショップの乱立です。1900年代まで小さな展示会にすぎなかったミラノ国際家具見本市(通称ミラノサローネ)が40万人を集客するなど、インターネットやビジネスイノベーションの発展で、世界中でインテリア・デザインやアートが人々の生活の中で重要なものとなっていきました。

アクタスも2002年にはスーホルムカフェブランドでの飲食+物販事業を開始、同時に全国にアクタスブランドの直営店の出店も加速させました。子どもと家族のための「アクタスキッズ」製品も開発販売し、ブランド化を始めたのもこの時期です。

2006年に自由が丘にオープンした「アクタスキッズ」専門店(現在は閉店)
 


子どもと家族のための「アクタスキッズ」製品



- 2000年代にたくさんのインテリアショップ、ライフスタイルショップがありましたが、いまでは多くは存在しません。そんな中なぜにアクタスは50年という歳月を、発展し続けられたのでしょう。

多くのショップがすでに存在しない理由のひとつは、サブプライムローンで資金回収不可となった2008年に起こったリーマンショックです。2008年のリーマンショック時は、企業の倒産が相次ぎ、2009年にはオフィス家具の需要が大幅に減少しました。その影響で大半のお店がクローズしました。弊社でも一部店舗のクローズに追い込まれました。

それでもアクタスはうまく調整を図りながら、挑戦することをあきらめませんでした。

すべての人の欲求には合わせることはできませんから、一定のお客様の価値観に合わせた『アクタススタイル』を作り上げてきました。このコンセプトに共感してくれる方々の支えがあったからこそ存続できたのだと思います。やりたいことを自分たちの価値観でやり抜くのは、それはそれで大変ですが、他社の流れやブームに合わせる必要がないので客層を絞り込みました。「自分たちはモノ売りを超えて時間と空間を売っている。『アクタススタイル』があれば、家具・雑貨に留まらず業種の壁を外して、なんでも提案してもよいのじゃないか」という考えです。

マーケティングの教科書のような答えです。しかし、それを実現することは至難の業です。

コンセプトに共感してくれる方々の支えというと、アクタスは地方主要都市で、製品だけではなく、店舗運営、人材育成、販促など全ての運営ノウハウを提供する、アクタス直営店ではないオーナー制度を用いたパートナーショップ事業(ICA店*6)の開拓をしています。第1号店は、1994年にオープンした九州・宮崎にある『インテリアライフ』です。ICA店はアクタスのコンセプトの共感はもとよりスピリットにも共鳴し合うことが必要です。

開拓当初、1件1件営業に廻った休山さんにとっては、「ICA店は、アクタスの大切なパートナー、家族であり、運命共同体のようなもの。直営店で培ったノウハウを活かして、最大限にサポートし、バックアップさせていただいております。直営店以外に鹿児島から北海道までライセンスショップとパートナーショップは合わせて38店舗*7になりました。以前は地方ではインテリアの選択肢が限られ、住居に関する感度も低いとされていました。ですが、今では、情報やモノがインターネットでどこにいても入手できる環境が整い状況が一転しました。インテリアを意識している人は地方にも一定層います。各都市に10パーセント居れば十分な市場です。感度の高い人々の地方での豊かな暮らしの共感はこれからも続くはずです。」

*6 (ICA/Interior Collaboration Actusの略)
*7 2021年3月現在の店舗数

 

 


https://www.actus-interior.com/

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(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2021.04.19)

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