ユニークな発想を形にして、国内外へ提案するミチ・コーポレーション。最終回は、スタートのきっかけとなった、スリランカのゾウの話から、ミチ・コーポレーションのビジネスにある「大義」について掲載します。
「スリランカでは、人間と野生のゾウが対立関係にありました」と、植田さん。元々スリランカは、ジャングルや珊瑚礁の海など、豊かな自然を残した美しい島国ですが、ここ数年は、街のいたるところにゴミの山ができ、古い自動車の排気ガスで空気は汚れ、自然環境が猛スピードで破壊されつつあるといいます。ジャングルも開発され、住みかを追われた野生のゾウが、エサを求めて迷い込んだ民家に入り込んだり、畑を荒らすなどトラブルが頻発しているそう。「年間200頭以上のゾウが銃で撃ち殺されていました」。
そのような状況で、ゾウと人間がうまく共存できるビジネスモデルとして登場した「ぞうさんペーパー」。ゾウのうんちを集め、工場で殺菌加工し、廃棄物の古紙とうんちの繊維を混ぜ、手漉きによって紙を一枚一枚製造しています。
「人間と野生のゾウが傷つけ合う状況でしたが、ぞうさんペーパーを作ることで、現地の人も(ゾウが住む)ジャングルを破壊すれば、人間も生きられないわけですから、ゾウを殺すこともなくなりました」。ゾウと人間が協力しあって商品を作り、海外に輸出することで、外貨を獲得。現地の雇用も生み出すこのビジネスモデルの根底には「大義」がありました。「僕は、大義のあるビジネスをやっていきたいと考えています。ゾウと人間の対立を解決し、協力しあうことでお金が循環するビジネスモデルに、共感して支えてくれる人(消費者)は多ければ多いほど、一石が何鳥にもなるわけですから」。
また「そこで働く人が、家族に対して胸を張って言える仕事を提供したい」と、植田さん。以前は、ジャングルの木を切り倒さなくてはいけない仕事をしたり、ゾウを嫌って撃ち殺していた人たちが、今ではゾウがより住みやすい環境作りをすすめています。「みんなが幸せになるビジネス、大義のあるビジネスだからこそ、みんなの共感を得て、自分もがんばれるのだと思います」と植田さん。
日本とスリランカをつなぐ同社のものづくりビジネスは、言い換えれば出会いや偶然とアイデアやオリジナリティの「幸せな結晶」です。安売り競争に明け暮れ、消費者の存在を忘れた“価格ベースの”戦いに振り回されている日本のメーカーが、すでに目の肥えた日本人消費者を本当に満足させているのでしょうか?そして、これからのものづくりビジネスにおいて、“お隣さんとの小さな差別化”にこだわって勝ち抜こうとする、従来のスタイルとは異なる「フットワークが軽く」「自分たちの可能性を限定することなく」「関わる人みんなが幸せになれる」という、視野の広い新しい方法を私たちに提案していると感じました。
アジアトップの先進国である日本は、これからアジアの手本として、自分たちの生活や行き方を見直していかなければいけない時にきています。それは、私たちの後に続く69億の人たちの生き方や生死に関わるといっても過言ではありません。エネルギーを消費しない商品づくりについて、日本企業は真剣に考える時期ではないでしょうか。
公式HP http://www.michi-corp.com/
(文:宮内 有美 / 更新日:2011.03.20)